
向島界隈の旧町名が残っている地図を見ると、鳩の町のやや南に「向島請地町(うけちちょう)」という一角があり、その地名が気になっていた。もしかして「身請」から来ているのか?などと思ったりしていたのだが、地元の方にきいてもはて・・・とめぼしい解答は無かった。
家にある荷風の著作を読み返し、そして古本の木村荘八(墨東綺譚の挿画を描いた画家)著、「女性三代」という随筆を読み返していたら、その答えが出ていたのである。
それによると「請地」とは「浮地」のことで、つまりは埋め立て地という意味合いなのだそうだ。特にこの玉ノ井辺りもやはりその「浮地」であり、塵芥の上に無秩序に家を建てたらしい。その地盤の悪さは言うに及ばず、墨東綺譚に出てくるあの溝川はすぐ水が溢れてしまうのだった。墨東綺譚本文にも、「ここはもともと埋地で、碌に地揚げもしないんだから」と、お雪の抱え主が語る場面が出てくる。
今現在はそうした土地の持つ翳りや無気味さは殆ど感じられない町と化してはいるが、やはり歩けばその路地の複雑さには迷ってしまう。そして知らぬ間に、余り陽の当たらぬ細い地べたの道や、昭和の匂いのする平屋の家並みの前に出たり、装飾のある窓ガラスに出会ったりするのである。
≪この記事へのコメント≫
>そちらはもう随分お寒いことと思います。
荷風は何故か若い頃から好きでした(って、ほんと変なヤツでして・・・)。でも実際に玉ノ井や鳩の街を歩いてその足跡をたどるのはとても興味深いです。作品を追体験するような感じで。
リンクどうもありがとうございます。当方は現在リンク表示しておりませんので、相互にならず申し訳ないのですが。。。今後ともよろしくお願い致します。
荷風は何故か若い頃から好きでした(って、ほんと変なヤツでして・・・)。でも実際に玉ノ井や鳩の街を歩いてその足跡をたどるのはとても興味深いです。作品を追体験するような感じで。
リンクどうもありがとうございます。当方は現在リンク表示しておりませんので、相互にならず申し訳ないのですが。。。今後ともよろしくお願い致します。
川本三郎『荷風と東京』(都市出版)を図書館から借りて読んでから、この荷風さんの面白さが少しづつわかったきたような気がしています…?。
墨東綺譚、断腸亭日乗も読まなくてはですね。
当方の拙ブログにリンクを貼らせていただきました。事後承諾で申し訳ございません^_^;
墨東綺譚、断腸亭日乗も読まなくてはですね。
当方の拙ブログにリンクを貼らせていただきました。事後承諾で申し訳ございません^_^;
>ありがとうございます。
墨田区民LGさんのお近くですものね。いやとにかく久しぶりの玉ノ井は、フトコロ深くてすっかりまたハマリましたよ~。
ほんとにちょっと日常から逸脱していくような不思議な感覚がありますね。京島の雰囲気とはまた少し違いますが、やっぱりどちらもすごく好きです(loveです~)。
墨田区民LGさんのお近くですものね。いやとにかく久しぶりの玉ノ井は、フトコロ深くてすっかりまたハマリましたよ~。
ほんとにちょっと日常から逸脱していくような不思議な感覚がありますね。京島の雰囲気とはまた少し違いますが、やっぱりどちらもすごく好きです(loveです~)。
所々にだけブルーの色が入っていて、なんともいい感じですね。古い木の電信柱や電線も素敵に見えます。
あの辺りの裏路地は確かに湿気があって、騒いではいけない不思議な緊張感が漂っている感じがしますよね。
あの辺りの裏路地は確かに湿気があって、騒いではいけない不思議な緊張感が漂っている感じがしますよね。
>江東から墨田(向島)一帯は、デルタ地帯で、地盤がもともと脆かった地域のようです。今でも墨田区周辺は地下水の汲み上げ過ぎで、海抜0メートル地域で、荒川の堤防のほうが高いような様相を呈しています(技術評論社刊、「東京の凸凹地図」H18、P96参照)。
そんな湿地の上に、大した基礎工事もせずに無秩序に家を建てていってできたのが、この玉ノ井一帯のようです。
路地裏にはいると、そんな湿り気はまだ充分感じることができる気がします。
そんな湿地の上に、大した基礎工事もせずに無秩序に家を建てていってできたのが、この玉ノ井一帯のようです。
路地裏にはいると、そんな湿り気はまだ充分感じることができる気がします。
向島界隈が、埋め立て地だったとはびっくりです。
昔は湿地帯か何かだったのでしょうか。
今回の絵は、建物の脇に路地が続いて、いい感じです。
昔は湿地帯か何かだったのでしょうか。
今回の絵は、建物の脇に路地が続いて、いい感じです。
>いつもありがとうございます。
愉しみにしていただけるのは絵描き冥利に尽きますよ。ワタシもこの奥に何があるのかは解らないのです。でもこういう路地は、色々な想像をほんとにかき立ててくれます。私の知らない過去の幻影を、いっときたちのぼらせてくれるような。。。
愉しみにしていただけるのは絵描き冥利に尽きますよ。ワタシもこの奥に何があるのかは解らないのです。でもこういう路地は、色々な想像をほんとにかき立ててくれます。私の知らない過去の幻影を、いっときたちのぼらせてくれるような。。。
いつも絵を見せて頂いて、じいっと見て楽しむ。
こんな時間が一つの楽しみになっています。
この路地へ進み、その奥には何があるのか、今から想像して楽しんできます~。
こんな時間が一つの楽しみになっています。
この路地へ進み、その奥には何があるのか、今から想像して楽しんできます~。
>多分これは棕櫚の木ではないかと思いますが、場違いな感じに平屋の前にありましたので、そのまま描きました。植物はあまり描かないのですがね。このバアイは雰囲気が出そうだったので。
あれからまた何度も墨東綺譚、断腸亭日乗、寺じまの記、その他読み返していたのですが、木村荘八の文献に色々出ておりました。
お雪のいたとされる付近は、ほんとに暗くじめっとした「魔窟」の感じに書かれていますね。この歳になって読むと、その辺のことがストーリーより興味深いですね。
あれからまた何度も墨東綺譚、断腸亭日乗、寺じまの記、その他読み返していたのですが、木村荘八の文献に色々出ておりました。
お雪のいたとされる付近は、ほんとに暗くじめっとした「魔窟」の感じに書かれていますね。この歳になって読むと、その辺のことがストーリーより興味深いですね。
民家横のヤシの木(そんな筈ありませんが)、好い感じですね。
横丁をどんどん歩いて、お雪さんを訪ねたくなります。
それにしても、請地→浮地でしたか。
確かに墨東一帯では、「昔はよく水が出たもんだ」と聞き、実際、台風などで何度も浸水してますね。
横丁をどんどん歩いて、お雪さんを訪ねたくなります。
それにしても、請地→浮地でしたか。
確かに墨東一帯では、「昔はよく水が出たもんだ」と聞き、実際、台風などで何度も浸水してますね。
この記事のトラックバックURL
≪この記事へのトラックバック≫
ブリキのバケツ、美しいとしかいいようのないほど見事に錆びたフタ。
コンクリートの箱は防火用水だろうか。
もう角にはひびが入ってる...
2009/05/13(水) 08:42:17 | 東京バーベキュー
| HOME |