
遅ればせながら・・・
残暑と言うより、酷暑の日々。皆様お変わりないでしょうか。
描いている画で本当は・・・と思ったものの、あまり涼しげな画が無くて。
先日の着物コーディネートで誤魔化しました。
アンティークの夏着物は素敵な柄も多く、本当は着たい時季なのですが、何せこの暑さ。着ることよりも、一日着てしまって、汗まみれになった絹の着物は自分で手入れすることができず、洗いや汗抜きに出さなければなりません。そう思うと億劫になり着れないまま夏も過ぎていたのですが、先日少し陰った日に綿の着物を思いきって着ることにしました。まあ浴衣の類ですが、ちょっと縮(ちぢみ)のような風合いのもので、半襟を入れれば普通の着物として充分使えるもの。勿論家で手洗いできます。
襟を入れようかとも思ったのですが暑さに負け、そのまま。帯は白地の博多織の半幅。
これだと割とささっと気軽に着れるので楽です。
博多の帯はシンプルですが大好き。どんなものにも合うし、品があるし、締めやすい。
藤色の帯締めに、夏らしく透き通るアメジストの古い帯留、プラスチックですがこのコーディネートには合う気がするミドリの簪。
竹製の籠ふうバッグと持ち手が竹の日傘。
画像にはありませんがこれに鼻緒が銀鼠の、畳表地の下駄を合わせました。
そんなに凝った取り合わせではありませんが、案外涼しく見えるようです。
その日用事で会った方々にはそう言って下さる方も。
肌を沢山露出した服装よりも、何故か涼しげに見えるのは、どこか凛とした感じが着物には備わるからでしょうか。
暑さももう暫くと思いますが、皆様どうぞ御自愛下さいませ。
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最近時々、都内の骨董市に出かけるようになった。
以前から骨董は勿論大好きだったが、着物を着れるようになって楽しみが増したのもあり、また掘り出し物を自分の眼で見つける醍醐味もあって、暇をみて出かける。あとまあ、コドモ達が大きくなって、日曜でも自分だけぷらっと出かけられるようになってきたせいもあるかな。
よく行くのは、自宅からメトロ一本で行かれる大江戸骨董市。
有楽町のフォーラムの広場で第一・三日曜にやっていて、出店数も多いのでじっくり何時間も楽しめる。
特に何を買うというあてもないのだが、古いものを見ているだけで、現代にはないデザインや色合いなど、いつまでも飽きず心が和むのだ。また、男女問わず、着物のひともちらほら。先日は年配の男性で、着慣れた感じに着こなしていた方が何人か居て、思わず眺めてしまった。
着物系は、夏の絽の長襦袢で素敵なのがあったが、ちょっと高かったのでスルーし、雑貨の店などを覗いていたら、美しいガラスペンのセットがあって、思わず手にとってしまった。ペン先のガラス部分の色・形が全部異なるデザイン。よく見たら竹製の柄の部分も皆違う色だ。お店のご主人によると、戦前のもので、閉店したとある店の中から、ごっそり未使用のまま出てきたのだそうだ。それで、色の違うものを6本セットにして出しているそうである。並べてみると御覧の通りのうつくしさ。1本300円、計1800円。もうなかなかこういうセットではないだろうということで、購入。
ワタシ自身、ペンの細字が好きなこともあって、以前ガラスペンを使って手紙など書いていたこともあったが、このペンはきれいでちょっと使う気になれないなぁ。暫くは眺めているだけで充分シアワセ。
柄の部分もガラスでつくってある高級品もあるらしいが、そこまで行くと気が引ける。
因みに、このペンの柄に貼ってあるメーカー名の「葵文具製作所」は、検索しても出てこなかったので、今はもう無いのだと思われる。
こんなペン先を綺麗な色インクに浸し、しめやかに細い文字を書いた時代もあったのだなと想うと、それだけでも浪漫な気分ではございませんか。



アンティークの帯のなかで、ワタシがめっぽうヨワイのが鳥のいるデザインの帯。
つぶらなまるい瞳、ちっちゃなアタマ、長い尾っぽにとりどりの羽。
大正昭和の帯には、何故か鳥の柄がよくある。
そういえば昔の童謡も、小鳥の歌は色々ある。歌を忘れたカナリヤ、あかい鳥ことり、ななつの子。。。どの唄もちょっぴりものがなしくて、なつかしくて、やさしい。そんなあまずっぱい幼い頃の記憶が何処かによみがえるせいだろうか、こんな小鳥たちに出会うと、たまらなくて抱きしめたくなってしまう。
着物の柄にも鳥のものはあるけれど、ワタシは帯のお太鼓部分に、ちょうどちょこんと登場するような鳥たちが好きだ。うまくその部分を出して締められた時は、それだけでウレシイ。
この3つの帯は、手元にやってきた経緯も場所もそれぞれ違うのだが、どの小鳥たちも遠い夢の世界のなかから、ワタシに囀りかけているかのようなのだ。



一晩ごとに秋らしくなっていくようなこの季節。
ずっと待ちかねていた本が手元に届きました。我が家から徒歩1分のところにあるアンティーク着物店「Ponia-pon」の店主、大野らふさんの著書。タイトル「大正ロマン女子服装帖」~。
以前にもちょっと紹介したこのお店は、大正~昭和初期にかけての着物や帯を扱うショップで、アンティーク着物ファンには目を離せない一軒。大野さんの審美眼にかなった着物達はどれもうっとりするような代物ばかり。その質の高さ、また大野さんのポニア風コーディネイトも定評があります。
そのファン垂涎のコレクション、コーディネイトがこの一冊にぎっしり。
そして実は、ほんのちょっぴりですが、この本の制作過程を覗かせて頂くという幸せに預かることがあったのです。
着物と帯の単品撮影の現場が、私の家のすぐ近くであるというので、是非にとお願いして半日覗かせて頂いたのでした。普段お店には置いていないとっておきコレクションのうつくしい着物の数々を目の当たりにでき、撮影の済んだそれらを端から畳むお手伝いをさせて頂いたのですが、眼福の至り。。。
中でも、画像アップした縞の散歩着や、本に掲載されている電車柄?の帯などは、そのデザインの素晴らしさ、懲りようにエクスタシーすら感じましたね~、ほんとに。大野さんも、「こういうのに出会えるから、この仕事に命をかけてしまうのよね~」というようなことをぽろりと。。。そこまで惚れてこその仕事でしょう。
大正から昭和初期にかけてというのは、今からは想像できない素敵な時代であったのではと思うことが屡々あります。作家の林真理子サンがたしか、彼女のお母様世代がちょうどこの時期で、「戦争前のこの時代に素晴らしいいっときがあった」というようなことを何かに書いていたのですが、この時期の着物と言い建物と言い、想像を遙かに超えた自由さと浪漫とが横溢していたように思えてならないのです。私の画を描くときにも、こうした色やデザインはどこかに影響している筈です。
というわけで、この秋もどっぷりこの着物の世界にはまりそうな私です。
一番右の画は私がこの秋に試してみたい取り合わせ。柿色+曙色+藤色が主体の着物にモダンな感じの古い帯締めがポニアさんのもの。袷を着始める来月が愉しみです。
夕方写真追加:
昨日今日と根津神社のお祭りで、我が宮永町会の御神輿も、雨にも負けずいなせな男達に担がれ、我が家のはす向かいを出発し、Ponia-ponの前を通り、神社へと繰り出して行きました。この近所は鳶の方も多いので、若い衆の雰囲気も江戸っ子そのもの。好いなあ、やっぱり伝統の気風って。




ぽち袋を集めるようになってどのくらいになろうか。もう20年来かもしれない。とにかくこの小さな世界が大好きだ。今の季節だったら上のような涼しげなもの。うちわの柄の白抜きのところに、相手の名前や「御礼」などと書いたら一層好いかも。

鹿の子柄や、縞柄など芸事っぽい柄も随分ある。習い事のお師匠さんや友人、芝居のチケットを買っておいていただいた時など、こんなのにお札を入れてみたい。。。(未だにそういう機会はないけど)粋な柄って鮮やかで潔い。


めっぽうヨワイのが桜柄。着物でもそうですが。華やかだけど、夜桜のなんて渋いものある。隣はお馴染み干支のものなどお正月用。木版手刷りのものがやっぱり好い。

最後は少し変わり種。でもとても気に入っているもの。
上のかたばみ2種は、銀座の平つかという店のもの。すっきり、でも大胆な素敵なデザイン。季節を問わず使えるし、珍しくて喜ばれる。真ん中は水引付。これはfranc francという洋ものインテリア雑貨店が出している。下段は紫のはやはり木版手刷り。デザインと色の調子の見事さがたまらない。左ふたつはそれぞれ「十六夜包み」「門出」というタイトルが付いた、確か若いデザイナーの作品だったと思う(忘れたのであった。。。)。なかなか斬新で和紙の薄さも好い。
いやはやこうしてみると随分愉しいもの。皆様のお気に入りはどれでしょう。お答え下さった方には中に金子を入れてもれなく進呈・・・したいけれど、先ずは気持ちだけで。悪しからず。

白くて香りのする花が好きなのだけれど、この季節、すずらん、くちなし、百合とそれに当てはまるのが多いのです。
なかでも百合の花のかたちは画的にも惹かれるものがあります。
夏目漱石の小説「夢十夜」の冒頭第一夜に、印象的に百合の花が登場しますが、このお話も昔からとても好きでした。「それから」にも百合の花が出てきますので、どうやら漱石もこの花には特別な想いがあったと思われます。
近年、森田芳光監督で「それから」が映画化されましたが、このときヒロインの着ていた百合の花の浴衣も、色々なものを暗示していてとても好かったのです。以来、百合の柄のきものは遠い憧れでした。
そうこうしていたら今年出会ってしまったのです、長年の恋人のようなきもの。
夏の絽の着物で、御覧のような透け感があり、破れ麻の葉文様とあいまってうつくしい。
地色は紫ですが戦前の染め色なのでしょう、どぎつさのない、しっくりした色。
図柄としては大胆かもしれませんが、着物だとそれがあまり気になりません。
で、たまらず手元にやってまいりました。。。
絽の着物は昔は高級品だったのですが、現在アンティークとなったものは、信じられない安さで出ています。
絽の着物は7~8月の盛夏にしか着ませんが、ようやく何とか着付けも独りで出来るようになったので、今から袖を通すのが楽しみです。
嘗てスケッチした百合の画を置いてみました。
タイトルの「ユリ・コレクション」は、あがた森魚の、珍しくあかるい大好きな曲。イントロの軽やかなフルートの音色が、梅雨の鬱陶しさも飛ばしてくれるような素敵な一曲です。(ん~多分ご存知の方は少ないでしょうが。。。)
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家の近所に小さな骨董屋がつい最近できた。
近所だがあまり行かない通りにあって、先日バスに乗っていて初めてあれっと気づいたのである。
偶々先日通りがかり、時間もあったのでちょいと覗いてみる。
食器類が多いが玉石混淆といった雰囲気。名品ばかりを置いて澄ましている感じの店ではない。
まだ値札の付いていないものもかなりある。他に客も来ないので和硝子など手にとって見ていたのだが、ちょっと目立たないところにこの櫛があった。
持ってみると意外に重みがあり、本物の鼈甲に意匠を施したものだと素人目にも解る。そのデザインの華やかで愛らしいこと。螺鈿の牡丹の傍らに鳥が羽を拡げ、小花が周りを飾る。その小花も珊瑚やら金やら螺鈿だ。右は櫛の裏側。ここにも小花の柄が施されている。その細かな意匠には驚くばかり。見とれていると店主のオジサンが、実は手に入れたとき、この櫛は真っ二つに割れていたのだと教えてくれる。なるほど牡丹の花びらの際のところに、割れた後がはっきり見える。
店主さんはもともと絵画の修復師で、この櫛も自分が割れていたのを接着剤で付けて修復したのだそうだ。かつての日本画の良き時代を懐かしそうに話す。小野竹喬、伊東深水。竹喬好いですよねワタシもちょっと日本画をやったことがあるんですよと言うと、相好を崩して、気に入ったならそれ持って行きなさいよと言う。
ええっ、それはできませんよ。ちなみにほんとは値段はおいくらなんですか?
言われた値段はとても安くて、逆に躊躇したら、それでも高いとワタシが思ったと見て、
「またたまに来て、ちょっとずつ払えば好いよ。引越したら、忘れてもいいよ」。
いやいや引っ越しませんけどね。
それで、信じられないくらい安い内金?を払って、この櫛が手元にやってきたのだった。
割れた跡や、ところどころ螺鈿が剥落した箇所はあるものの、実際髪に挿すと驚くほど華やかで、いったいどんな人の髪を飾ったのだろうと想う。店主のオジサンの気持ちも有り難く、大切に他の鼈甲ものと一緒に、いつまでもとっておきたいと思う。
この店主さんについては、話しているうちに世間は狭いなと思うような面白い逸話があったのだけれど、そのお話はいつかもっと文章が巧くなったら(ならないけどね)書いてみたいような話であった。


陽ざしが一段と明るさを増し、夕暮れ時もほんのりした雰囲気が漂い始めるこの季節。
そうなるとご多分に漏れず、私も桜の咲くのが待ち遠しくてなりません。
本物の桜もたとえようもなく好きですが、文様となった桜もこれまたフェチ、というくらい大好きなのです。そして、桜を描くのも。。。
左の画像は、嘗てデザインした桜模様の葉書の数々。
日本画の絵の具である胡粉を使って描いていますので、心なしやわらかな色彩です。
こうしたデザインを考えるとき参考にするのが、昔の着物や帯の柄なのです。
右はアンティークの帯二種。ふたつとも昼夜帯といって、裏側にも柄があり、謂わばリバーシブル。
もともと着物だったのを帯に仕立てたものらしく、少し傷みはありますが、鮮やかで浪漫的な昭和の初期頃のもの。とてもやわらかい仕立てです。
そして、描かれている桜の、はんなりやさしく、そして浮き立つように華やかなこと。
日本人が、いかにこの花を愛してきたかが感じられます。
谷中の桜の木も、日ごとにつぼみをふくらませている様子。
今年の桜はどんなでしょう。

今年から、「アンティーク」というカテゴリを作ることにしました。
「画譚」ではありませんが、ワタシの画の世界とは何処か繋がっているかとも思います。
十代の頃からワタシの古いモノ趣味は芽吹いていて、ちりめんの大正・昭和初期の着物の柄・はぎれ、光りかたのやわらかい和硝子などには、夢夢しいほどの恍惚感をいだいてしまい、時間を忘れて眺めてしまうのが常でした。勿論高価なものは買ったり出来ませんから、骨董屋で見ているだけだったのですが、それを逆手にとって、骨董市などで安価な掘り出し物を探すのは巧くなった?ようにも思います。
今年は色々なことから解放されたこともあり、ゆっくり骨董市を廻ったりもしたいなぁと考えています。
今日の画像は、信じられないほど安く手に入れた髪留め二品。
両方とも銀製品だったら高いのでしょうが、材質はよく解らない軽い金属メッキ製品です。
しかし何とも可愛らしい、夢のあるデザイン。簪のほうは流れ星に三日月、尾のほうには小粒の真珠モドキが花のように付いています。バレッタタイプのほうは、野菊のような花がいちめんに。色あいが地味かと思いきや、髪に挿すととても映えるのです。
両方とも別々の地味な骨董屋で見つけましたが、なんと簪500円、バレッタ300円でした。どちらもごしゃごしゃっとまとめて色々な小物が重なっている箱のなかから、文字通り掘り出したものです。でもワタシの見立てでは戦前のものという感じで、昭和初期の着物などに合いそうです。
繊細でやさしげな日本のかたちのうつくしさ。
値段の安さにかかわらず、ワタシのお気に入りの<おたから>となっています。
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