
更新が遅れがちですが、もう少ししたらペースアップできるよう
只今準備中?です。
そう言っているうちにだいぶ暖かくなりました。
京浜bayの続きはまたいずれ出しますが、
今日は先月のスケッチブックからのラフです。
傾いた小屋。下は水に漬かっています。鶴見川沿い。
こんなぼろぼろの船小屋が、10年前くらいには連なっていたのですが
もうきれいさっぱり無くなってしまいました。
無くなって初めて、顕ちあらわれるものがあると
常々思っています。
ここ数年でも急激に過去の遺物的な建物などが無くなっていっていますが、
無くなったらお終い、ではないのだと。
幻視と言ったら格好良すぎるのかもしれませんが、
そんな世界は在ると思うし、
それを描きたいと思うのです。
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繰り返しくりかえし私の中に想起される風景というものが幾つかあって、
H町の遊廓街やこの侘しい海際の景色がそれなのであった。
此処は本当は河口で海とは言い難いのであるが、
京浜の湾を見て育った私にとってはほぼ海のイメージはこれなのであった。
嘗ては漁業も営まれた小さな岸には
捨てられた貝殻が真っ白に砂を埋めて、その上に辛うじて立っているような
船着き場や半分水に漬かったトタンの船小屋が累々と並んでいた。
今はすっかり整備されてあのぼろぼろの風景は
無かったことのようにかき消されてしまったが、
私には忘れようとしても忘れられない景色なのだった。
萩原朔太郎の「荒寥地方」「沿海地方」といった詩が浮かぶような
すがれた、小汚い、場末の芬々たる眺めであったがいつもそれらは
私の傷みを吸いとって、孤独を脆弱なものから磨きだし、描くことによって
遠い空の彼方に解放してくれるような気さえしていたのだった。

まだ12月にもなっていないのに、華やかな街なかを通ると聞こえてくるのは
気の早いクリスマスソングだ。それを聞く度に私などは心浮き立つよりも
何故か切なくなってしまう。そして、街が華やかであればあるほど
疎外感のようなものを何処かに遠く近く感じて、目を伏せる。
つまらない感傷であるとも思う。
自分は街育ちであるから、街が好きなのだが、どこか浮足立っている街は
淋しいものに映る。そして、喧騒を離れて 時代錯誤な商店や
一日中洗濯物のぶら下がっている日陰の裏路地の静かな空間にはいると
漸く自分の心の居場所を見つけたように、ほっと安堵する。
可笑しな感情であるとも思う。
画像は、すでに無くなってしまったとある床屋。
古びてオンボロだったが素晴らしい建築だった。今は新しく店舗を建て替えて
御商売は継続して居られる。
小さな駅のすぐ脇にあって、今でも閑かなたたずまいを残している。

個展が終わったら毎日眠くて仕方なかった。
展示の間は無駄に緊張しているらしく、毎日早くに目が覚めてしまい
一日の段取りを考え始めると眠れなくなる。
それでも何とか体調を崩さず終えることができた。
心の何処かが緩んだら、途端に眠くなった。
漸く色々な展示後の雑事も終わり、今回を振り返りながら
また来年の展示について考えを少しずつ集中させてゆく。
来年のテーマについて、ここ数年は展示が終わるか終らないうちに
次のテーマがはっきり決まっていたのに、今年はそれが無かった。
意欲が減退したのかと少し心配になっていたのだが、
ふと浮かんだ或る言葉がきっかけとなって、そうだそんな感じで行こうと
漸く気持が纏まりつつある。
その言葉はまだ内緒だが(笑)、来年は「アパート」「町工場」などという
建物呼称カテゴリから離れて、やや曖昧な、
しかし興味を惹かれるような括り方をしてみたいと思っている。
そして今年よりももっと自在に、自分の表現世界を拡げていけるように・・・
またこつこつと地味ながら、制作を始めて行きます。
(画像は久しぶりのとあるラフ。)

都内のO区まで行く時間があまりとれず、しかし少しなら・・・ということで、ここのところあまり遠くないA区に出かけている。最寄りの駅からそう遠くない所に小さな町工場が集まっている地域があるのだ。
ごみごみと立て込んだ住宅地のなかにちらほらと、らしきものが散見する。
トタンの屋根や壁は目印だ。
それで、ふと気付く。今迄随分歩いてきた町々の、魅力的なトタン物件というものは、住宅もあったが実は町工場であったものがかなりの数に上るのだ。・・・今になって合点がいく。
A区のとある地区には、そうした平屋トタンの工場が多い。そして、そう言うのは躊躇われるが、うらぶれた雰囲気である。このラフ画の一角もそうで、画的には魅力的だが、よく見ないと判らないような板きれに「××ヤスリ」とマジックで書いてあり、ああ工場なのだと思うと同時に、言い知れぬ哀しみと憤りのような感情さえ湧いて来る。こういう所でかくも地味に、埃まみれになって仕事している(いた)人々の暮らしとは、一体何であろうかと。
その一方で、先日はとても心温まる出会いなどもあったのだけれど、それはまたいずれ。

来年の個展の町工場系シリーズ(錆色系のシリーズという括りにするかも。でもほぼ8割方工場になりそう。詳しくは未定)では、通常よりも細長い画面のものを多くしようと思っている。1:2というかなり極端な比率。
以前もアパートのシリーズの時に、見て下さったとある方にちょっとヒントを貰っていたのだが、「幻燈街」では実現できなかった、というよりそのサイズがあまり相応しくなかったのだ。
でも次回の工場にはなかなか面白い画面構成になるとひそかに思い、現在試行錯誤中。
工場って、細長いものが多いのだ。
だが中には住宅地に埋もれる小さなトタン家屋のような工場もある。
そういうのは町並ごと描くか。それとも。
思い切ってタテ2横1の縦長構図なんかもあっても好いかも。
今回のラフは地味めなペパーミントグリーンの工場。
この構図通り制作するかはまだワカリマセン(笑)。