
京都の展示の後、続けて幾つかの行きたかった展示に
何とか駆け付けた。
★桑原甲子雄の写真 トーキョー・スケッチ60年 @世田谷美術館
★バルテュス展 @東京都美術館
★背守り 子どもの魔よけ展+石内都展 幼き衣へ~ @LIXILギャラリー
桑原甲子雄は点数が多くて、時代が旧いほど好かった気がするが、
衒いのない目線で至近のもの、人々、町を撮る、その普段のそれぞれの姿が
何故こんなにも印象深いのか。もう一度ゆっくり、もっと近所の美術館で観たい・・・
バルテュスは、混んでいるだろうからイマイチ気乗りしなかったけれど
見逃すのもちょっと惜しいので行っておいた(笑)。
私が好いなと思ったのは数点に限られるけれど、その数点は
なかなか色々な示唆を与えてくれて面白かった。
でもやっぱり混み過ぎて・・・落ち着かない。
それにひきかえ、無料で静かにゆっくり観れるリクシルの有難さ(笑)。
背守りと、それにまつわる石内都の写真と両方観れるナイスな展示であった。
浅草のアミューズの「BORO」の世界にも通じるけれど
昔の日本人が布というものをいかに大切にし、またそこに深い想いをこめていたか
そして、その優れたデザイン性にも改めて驚く。
すっかり「堕落」してしまった現代の我々は、もっとこうした過去の無名のひとびとの
つつましく敬虔な仕事を沢山目にして、今の自分を恥ずるべきだと思う。
そして、失ってきたものが何かを、ハッキリと自覚すべきであると思う。
スポンサーサイト

今回は私の大好きなアーティストの本のお知らせです。
以前から私の作品を観て下さっている方々にはお馴染みの、
コンテンポラリーガラス作家二人組のnido。
その作品の素敵さに感動して、三度のコラボ展までして頂いたnido。
そのnidoの待望の書籍が発売になりました!
「おしゃれなパリ風 自作ステンドグラス入門」というタイトル。
(世界文化社刊)オールカラー写真の美しい本です。
内容は、ステンドグラスを作ったことのない人にも大変解りやすい入門編と
nidoの作品集編に大きく分かれていますが、めくってみるだけでもとても楽しい本。
常に新しいものを生み出していくオリジナルな才能と
彼女たちの溢れるセンスにはいつも感心させられます。
そしてその作品たちの、暖かでちょっとノスタルジックな、でも
とても斬新でもある造形。ものを作る者にとっては憧れの存在でもあります。
私の部屋にも、幾つも彼女たちの作品がやさしい光を放っていてくれます。
是非この本のページをひらいて、nidoの世界の一端に触れてみて下さい。
そして是非、谷中の路地の奥の彼女たちの工房+ショップを訪れてみて下さい。
今はちょうど、nidoらしい、アンティークなフレームを活かした個性あふれるシャンデリア(!)が
幾つも新しくお目見えしています。是非に!

待ち焦がれていた松本竣介の展示に漸く行くことができた。
今回の展示は36年の彼の生涯の作品をほぼ網羅する大きな展示で、
出品点数も多くて素晴らしいものだった。
いつも彼の作品の前に立つと、本当に自分が打ちのめされるような感覚と、
そして限りない憧れの感情が止めようもなく溢れてしまう。
特にやはり市街の建物を描いたものが好きだが、
主要な作品がずらりと並んでいて、思わず溜息が漏れる。
ごく近くでそのマチエールの部分部分を眺めると
本当に彼の息遣いが傍で聞こえるような、そんな画面なのだった。
グラッシと呼ばれる技法で、薄い絵の具を何度も塗り重ねて得られる
不思議な透明感、色彩感は、彼ならではのもの。
本当に彼の色彩センスというものは天賦のものだと心から思う。
いつも沢山の沢山の課題を私に呈してくれる
大事な遥かな先生なのだ。
展示は年明け1月14日まで。

今年も余すところあと僅かとなった。
本年もこのブログを見に来て下さった多くの方々に感謝いたします。
さて、今年はかなり色々な展示を積極的に観に行って、吸収したものも多かった。
中でも印象に残っているものが、絵画では青木繁展@ブリヂストン美、写真では畠山直哉@写美、
そして初めて行ってみた小野忠重版画館・・・。
青木繁は、彼の作品だけを並べた展示というのは初めて観たのだが、油彩画の魅力と自由で力強い筆遣いが、やはり生で観ると想像を遥かに超えて素晴らしいものだった。
畠山直哉の写真は、こちらも初めて観たが圧倒するスケールの大きさと共に、精緻な表現が美しく、写真の力というものを改めて感じさせるものがあった。展示は自然景を撮ったもの(震災の写真含)だったが、その後に知った「LIME WORKS」という彼の代表的写真集が余りにも素晴らしくて、購入してじっくり見ているのだが、石灰岩の鉱山と工場を撮ったもので、力強い。そして美しい。
小野忠重は昭和初期から長く活躍し続けた版画家であるが、その記念館とも言うべきものが阿佐ヶ谷にあって、友人の個展に行くついでに立ち寄ってみたのだが、ご子息にあたる方が経営なさっているこじんまりした記念館だけれど、それだけにゆっくりと見ることが出来て、とても好かった。過去の彼のスケッチなども沢山ストックがあって、親切に色々見せて下さり、すっかり長居してしまった。彼の描く何でもない下町の川べりの風景や工場街などの表現の仕方が本当に魅力的だ。大好きな藤牧義夫の版画ともシンクロする部分もある。
そして新年にはその藤牧義夫の展示も始まる(@神奈川県立近代美)ので、今から楽しみにしている。
葉山館のほうでは村山知義の展示も2月にあるようで、これも行きたいのだが。
来年も多くの作家の作品を間近で見て、沢山のものを吸収したいと思っている。
それでは皆様、よいお年をお迎え下さいますよう。
惨禍に依然苦しむ人達に、少しでも明るいものが見えてきますよう。

前回、クレーよりモンドリアンに近い、と書いたので、ちょっとその辺のことを。。。
(長いので、興味の無い方はスルーして下さいませね~。)
初めてモンドリアン絵画を知ったのは中学生の時で、当時配布された美術のテキストのひとつに「美術 表現と技法」(日本文教出版)というのがあり、その中の抽象絵画の解説のところに彼の画が載っていたのだった。
そこには彼の3枚の作品・・・「赤い樹」「灰色の樹」「花咲くりんごの樹」が並べられ、具象から抽象へと移り変わっていったプロセスが紹介されていた。
その3枚ともが、非常に印象深く、またその抽象化の過程にも強く惹かれた。
印刷物ではあるが、その絵肌の厚みや筆遣いも深く心に刻まれたのだった。
今でもこのテキストだけは、ボロボロだが大事に持っている(画面左)。
その後1987年に西武美術館、88年にBunkamuraザ・ミュージアムで大きな展覧があり、両方とも見ることができた。今でもその時のチラシなどを大切に保管している。特にBunkamuraのほうは、彼の作品を見る最後の機会となるというので(以後は海外に作品を出さないことになったそうである)、じっくり観た。当時もそんなにも人気があったわけでもなく、でも私にとってはあの三枚の樹の画が並んで展示されたので、本当に目に灼きつける想いで長い時間観ていたのを覚えている。

今年になって、ワタシ的には見逃せない大きな展覧がいくつかあった。
小村雪岱(埼玉県立近代美)と斎藤真一が二箇所(武蔵野市立吉祥寺美+八重洲 不忍画廊)で。
色々慌しかったので、遅ればせではあるが漸く書いておく。
どの展覧も期待に違わず、大変好くて印象に残るものだった。
どちらも、もう二十年以上前から展覧のある度に何度も観ているけれど、やはりいつも心打たれるのである。
小村雪岱のほうは美術誌やテレビにも採り上げられて、今までになく喧伝されていた。
勿論悪いことではない。この「粋でモダンで繊細で」と銘打った今年の展覧の謳い文句通りの世界なのだが、今まであまり知られておらず、そういう意味では久しぶりに画期的な大きな展覧であった。
斎藤真一のほうは、東京ステーションギャラリーで99年に回顧展的な展示をやって以来の大きな展示だったと思う。
今回は展示替えがあり、後半しか見られなかったのは残念だった。画廊のほうは毎年展示があり、何点かずつは見ている。今年は特に、ワタシの好きな一枚が出ていたのでうれしかった。そしてやはり彼の作品は、実物を見るに限ると思う。あの色の持つ力は、印刷ではどうしたって出ないのだ。
どちらもワタシの画に大きな影響、刺激、いやもっと深い何かを与えてくれた作家であるが、両者に共通するものはやはり、日本人誰もが持っていた筈の、郷愁の在処を指し示していることであろうか。否、言葉にするのは無意味かもしれない。今こうしてもう一度あの画たちの余韻にふれると、切なくもなつかしい遠い日の風の匂いがよみがえるようだ。そして、それは私の中で、深い喪失感をも伴う感情なのであるが。

先日、好天の日に目黒区美術館で現在展示中の「ひろしま/ヨコスカ 石内都展」を見に行った。
ワタシは以前から石内さんの写真が好きで、もう10年以上前に手紙を書いたりしたこともあった。
ワタシが旧遊廓の建物を描いて居た頃、某編集者に「そういうのを撮っておられる写真家がいますよ」と教えられたのが石内さんだった。見せて貰った写真(連夜の街)に、非常に惹かれた。こういう画が描けたら、などと不遜にもよく想ったものだ。それで、同じようなモチーフで描いていた自分の個展の時に、厚かましくも案内状をお送りしたと記憶している。そうしたら、ちょうど海外へ行くので行かれないけど、頑張ってねといったお返事を思いがけず頂き、嬉しかったのを覚えている。その後も数回、お手紙でのやりとりがあった。
今回の展示は集大成のような充実した展示で、詳しく述べると長くなるのでここには書かないが、今までの石内さんの仕事がほぼ一望できるような感があった。
そして今回の図録がまた素晴らしいのである。
ずっしり重いなかに詰まっている内容は、全集に近い。
ワタシの好きな「連夜の街」の作品も多く所収されている。
この他に、やっぱりヨコスカを撮られたものがすごく好きである。
ざらついたモノクロの画面、そこに写し出されているのは荒涼とした、色あせた、否しかし何処か息づいて充血したような町。鳥肌のたつような、惹きつける力が写真のなかに籠もっている。
帰りがけに、何とご本人に偶然遭遇した。ちょうど取材があるということで、館に見えたところだった。
あまり側に人もいなかったので、名乗ってみたら不思議にも覚えておられ、「また何かあったら連絡ちょうだい。前と同じ処にいるわよ」。図録の表紙に、サインを快くして下さった。
思いがけないおまけのついた、幸運な一日となった。
ワタシの画が少しでもお好きな方には、多分解って頂ける展示であります。
***ひろしま/ヨコスカ 石内都展
2008.11.15 -2009.01.11(日) @目黒区美術館
石内都 (いしうち・みやこ、1947年、群馬県生まれ、横須賀育ち。現在は目黒区在住)
1970年代半ばから、横須賀の街や風景の写真を撮りはじめる。高度経済成長を遂げた戦後日本の裏側のさまざまに複雑な表情を、「ヨコスカ」の街や風景に読み取るかのような写真作品は注目を集める。
1979年、東京圏のモルタルアパートなどを撮った写真集『APARTMENT』で、木村伊兵衛賞を受賞。
やがてその関心は、個々人の生の歴史の重さを「身体」から読み取ることへと向かい、『1・9 ・4・7』を発表。また今年は、被爆前の広島の人々の生活を想起させる、広島平和資料館所蔵の被災衣裳を撮影した約40点の新たな連作「ひろしま」を完成。写真集「ひろしま」2008年4月26日発売。
前後するが2005年には、ベネチア・ビエンナーレ出品作の帰国展示(『Mother’s』)が東京都写真美術館で行われる。
目黒区美術館展「ひろしま/ヨコスカ」は、初期から現在の国際的な活躍に至るまでの、写真家・石内都の軌跡に、東京初公開の新作『ひろしま』を加えて、その仕事の全貌を紹介する充実した内容。


只今 ちょっと不馴れな?イラストの仕事をしておりまして、拙画のほうはお休み。良い機会なので、一度書きたかった、大好きな画家 小村雪岱(こむら せったい、1887-1940)について。。。
雪岱は、下村観山、松岡映丘など日本画の巨匠に師事した後、主に装幀・挿画の分野で足跡を残したと言える画家で、私は偶然大学生の頃、青山のハナエモリビルB1にあった骨董屋で、彼の肉筆画を観て以来、すっかり虜になってしまったのであった。
極細い筆書きの線のみずみずしさといったらない。そしてあえかな中にも何処か芯のつよさの見える江戸の女を描いたら、敵う者なしといった感じ。そして特に新聞小説の挿絵にみる黒白の配分の感覚の斬新でモダンなこと。密かに「日本のビアズリー」と呼びたいくらいである。(写真上左は、1987年リッカー美術館での展示図録。下は新聞小説「おせん」の挿絵コピー、昭和8年)

泉鏡花に気に入られ、装幀を任された本は余りにも美しく(写真一番上右、鏡花本見返し)、本当は欲しくて仕方ないが、古本屋でもとても買える値段ではない。私が学生だった当時は作品集も新しい版のものがなく、また特に好きな新聞小説の挿絵は観る機会もない。そこでまだ閑があった学生時代、それなら原本である新聞をみれば好いのだと思い、大学の図書館に所蔵のある読売新聞の昭和9年~10年にかけてを、マイクロフィルムで見せて貰うことにしたのである。

非常な時間をかけてマイクロフィルムをまわしながら、特に気に入った挿絵のコピーをとっていった。今でも大事にファイルしてあるのだが、それだけでは飽きたらず、それをもとにして年賀状のデザインなんかにもしてみていたのであった。(プリントごっこ使用。文字は絵双紙か何かの文字を組み合わせて描いたと思う。-あけましておめでとうござんす 本ねんもよろしく-)

また、当時属していた美術部の部誌に、こんな記事まで書いていた(笑)。まだとってある。。。

雪岱は画家であるが同時に非常にデザイン感覚にも優れていた人であったと思う。現代ではなかなかこういう画を描ける人がいない気がする。埼玉県立美術館では所蔵の作品なども時々展示されるので、是非機会があったら御覧下さい。

ギャラリーツープラスでの展示は無事終了することができました。
関係者の皆様、おいで下さいました皆様、ほんとうにありがとうございました。次回報告エントリーを書きたいと思っております。
本日は、これもまたサイトを通じて知り合った、若い友人のtomoさんの初写真展についてのご紹介。
もう1年以上前になるが、「東京浪漫劇場」というサイトに行き当たった。すばらしくデザインされた画面と、その内容の深さに驚いて、時々訪問していたのだが、5月にNomadで自分が個展をするときに、思い切ってメールを出してみたのだった。そうしたら何と「私も7月にNomadで個展をします」というのだ。

昨年の十月に、「谷中芸工展」という催しがあった。谷根千地域で活動するアーティストたちが、それぞれの作品活動を発表するというもので、スタンプラリーなどもあって、散歩しているだけでも愉しいのだ。その折に出会ったのが、谷中銀座の近くの細い路地を入ったところにあるステンドガラス工房の「nido」さんだった。
nidoは3人の若い女性アーティストによってたちあげられた工房で、かつて洋裁学校だった古い家屋を自分たちで改造して、店舗も兼ねている。初めてここを訪れた途端、もうすっかり私はファンになってしまった。中のインテリアをはじめ、並んでいるガラス作品は、よくあるステンドガラスの作品とはちがって、シックでいて可愛さもあり、そして何と言ってもほんのり温かいのだ。
| HOME |