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N的画譚

N町在住、陋巷の名も無き建築物を描くneonによる、日日の作画帖です。
浦の苫屋の・・・


中世の歌人藤原定家(1162-1241)の有名な和歌に、
 見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ
というのがある。(新古今集 秋上)
「うらのとまや」というのは、「海沿いの粗末な小屋」とでも言おうか。定家という歌人は、「見渡せば花も紅葉も」と、まず平安朝以来の美意識の象徴でもあるものを詠みいだしながら、次に「なかりけり」とそれらの存在を否定してしまう。眼前にあるのは本当は「浦の苫屋」という寂しい、何の華もない風景だ。だが、この歌を読む者は、イメージの中にまず「花、紅葉」を思い浮かべる。そしてそれは不意に否定される。しかしまだ花と紅葉のイメージの残像があることろに、「浦の苫屋」が重なる。そう言う意味では、定家はかなりのテクニシャンなのである。こういう手法をかなり駆使して歌を詠んでいる。そして、「浦の苫屋」に見られるような<冷え寂びた>情景を歌の中心に据えるというのは、当時としてはかなり常識の枠を打ち破るものであった筈である。

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かわいい床屋


昭和に建てられた床屋や美容院は、愛らしいものが多い。町並の雰囲気に溶け込みつつも、ちょっと主張しているところがいい。扉に真鍮の取っ手がついていたり、窓のガラスに縦縞の凹凸があったり、名前も「すずらん」とか「すみれ」とか、可愛らしいのがついている。以前南千住に「バーバーハイカラ」なんていうのもあった。この画の床屋さんは、もうほぼ廃業状態だったが、淡い灰ピンクの壁面で、細部の意匠にも出過ぎないくらいの工夫があり、思わず微笑ませるような建物だった。
ポストカード春バージョン発売中


今日は千駄木の往来堂書店さん(http://www.ohraido.com/)に、昨秋から置いて頂いているポストカードの模様替えに行ってきました。昨シリーズでの売り上げベスト3位までのものだけ残し、あとは絵柄を取り替えました。全9種類です。今回は季節をイメージし、春めいた雰囲気のものを何枚か入れてみました。でも、中心にあるのは巷のオンボロ建物・・・というところが一貫しています。
画像の桜降るはがきは、今年の桜が散り終わるまでの季節限定にしました。通信販売は行っておりません。往来堂店頭のみの販売です。往来堂は本の品揃えも他店とはちょっと違います。下町の小さな本屋ですが、なかなか意欲的な取り組みをしています。私のはがきは、店内の「東京本コーナー」のところに展示してあります。是非一度お立ち寄り下さい。
正面の構図


建物の正面からの構図というのが好きである。一番平面的な構図なのだが、そこがいいのである。というか性に合っているのだろう。この画は97年に描いたもの。本当は色も付いているが、手元になくて、これはコピーなのだ。だが、どうもモノクロのほうが格好良く見える。
実は今日は違う画を用意していたのだが、ここにもコメントを下さる
GG-1さんの「Roc写真箱」にアップされた写真
http://Roc69.exblog.jp/tb/2794965
に感動してしまい、その余波で、この画のことを想い出したのだ。
この画のモチーフは、千住柳町にかつてあった建物。旧遊郭であるが、その後普通の住宅になっていて、ひそやかに息をしているといった感じであった。それを「廃味」を濃く出して描いたもの。この頃の線は、まだまだ遊びもなく、息をつめて描いていた感がある。長い鍛錬期だった気がする。
GG-1さんのおかげで、曙ハウスの画のほうは、頭の中ではほぼ出来上がってしまった。
錆朱の町


埼玉県立近代美術館(北浦和)で開催中のベン・シャーン展に行ってきた。点数が200点と多い上、そのほとんどを占めるインクで描いたドローイングが素晴らしく、充実した内容だった。やっぱり線の素晴らしい画家は尽きせぬ魅力がある。常設の一部に小村雪岱も出ていて、この人も昔から大好きな画家のひとりである。彼の描く線の美しさといったら、もう筆舌に尽くし難い。いつか彼についてもここに書きたいと思っている。
さて今日アップしたこの画は、過去作のひとつで、2000年に銀座のギャラリーで個展をしたときに出したものだ。
アイデア・スケッチ
前回に引き続き、ペンによる線画。モチーフになったのは京島の長屋である。勿論見たままではなく、遠近法も無視、建築的に何処がどうなっているのかも無視、自分でも可笑しいくらいに換骨奪胎してある。
この、言わばアイデア・スケッチを何度か繰り返してかたちを練り、最後に色彩画に仕立てる。
陋巷の建物は木造が多いのだが、かといって木の色だけというわけでもない。あとから異素材を継ぎ足しくっつけたようなものがかなりある。それがおそらくは「必要」という観点からのものだから、それなりに存在感があり、一見脈絡無い色かたちなのに、非常に存在感を感じることがある。だから、画にするときも、あまりそこからはみださない色をつかうことにしている。そのためのメモ書きを、このようにアイデア・スケッチのなかに記しておいている。

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オンボロ*ハウス


今日はまずお知らせから。この拙ブログを立ち上げるのに力を貸して下さったm-louisさんの素晴らしいブログ、「谷中M類栖」で拙画のことを記事にして下さいました。
http://yanaka.m-louis.org/2006/02/13/2127.php
とても素敵なサイトですので、是非ここだけでなく他の記事もご覧になって下さい。m-louisさんとのご縁を作って下さったmasaさんのサイト
「Kai-wai散策」http://mods.mods.jp/blog
もとても魅力に溢れるものです。
お二人とも、素晴らしい写真と視点でブログを構成なさっています。
遠くに海が見える
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見たまま、或いはスケッチや撮った写真そのままを画にする、ということは私の場合あまりない。最近は、時間がないのでスケッチもほとんどしない。デジカメで撮る写真は、参考程度にそばに置いておくが、そこから画にしようとするときは、もうその現実の建物や風景からは離れていく。描きながら、建物や道が生まれ、遠くに海が見えてきたりする。いつもそうするするとはいかないが、たまに気が付くと現実には見たことのない風景が、画面に起ちあがっていることがある。なのに遠くに見えている海は、多分私が昔見ていた、なつかしいあの海なのである。
ブルートタンの家
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トタンが好きなのだ。とくに、目の覚めるような青い色のもの。少し青みがかったグレー。場末の町を歩くと、必ず出くわす色だ。波形トタンの、ちょっと錆の出たようなのもいい。色々な形状のトタンがパッチワーク状になって構成されている建物は愉しい。オンボロだが魅力に溢れたこうした愛すべき家々を、シンプルに、美しく、小さくても靱さを伴って見えるように描きたい。いつもそんなふうに思っている。
初めまして

neonticaと申します。
初めてブログを立ちあげることになりました。
不馴れではありますが、色々アドバイスを頂きながら、マイペースでやっていきたいと思います。
自分の描いている画(え)をアップしながら、それにまつわること、そうでないことも含め、自分の好きな世界を少しずつご紹介します。

1964年 横浜は本牧の生まれ。
10年ほど日本画を学んだ後、90年代より独自の混合技法による作品を発表。装画、カット、ポストカードなども手がけています。
では、どうぞよろしくお願いいたします。

neontica
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