
3/27~29、京都に滞在した。27日、薄日の射す春めいた中、6年ぶりにHを訪ねた。ブログで知己となった大阪在住のm-louisさんと、やはり彼のブログ友達である建築家のちはるさん(男性。)と落ち合う約束をしていたが、その前にどうしてもひとりでまず見ておきたくて、1時間ほど前には駅に着いた。久しぶりに見たHの町は、櫛の歯が抜けたように更地が増えてしまっていたが、相変わらずしんと閑かでゆっくりめぐれば、まだそこここに遊廓だった名残があった。年老いてはいるけれど、そしてもう手足の自由はきかないけれど、歳月の流れに任せきっているような穏やかさが感じられた。寂しいけれどいつかは人も建物もなくなっていくのだ。
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話が前後するが、前回の画を描く直前に橋本を久しぶりに再訪した。鳥の窓の家も、もうすでになく、遊廓の建物は半減してしまっていた。昔の恋人の凋落ぶりを見るようで切なかったが、下手に観光地のようになってしまうよりはまだ耐えられる気がしたのだった。
そしてF30の画を描いてからは、遊廓建築を描くことからだんだん離れて、もっと市井のありふれた建物に目がいくようになっていった。
だが今でもかつて遊廓だった場所の残り香のようなものには惹かれるのである。私の今住んでいるN町にもかつて遊廓があった。ほんの少しだけ、その名残はまだあるようにも思う。
そして実は明後日、・・・6年ぶりにHを訪れる。
アップした画像は、1995年に、まだ黒い紙にネオン管のように描いていた頃の、断片のような画。鳥の窓のモチーフは、きっと心の中にずっと持ち続けるだろう、たとえそれを描かなくなっても。

そろそろ春めいてきたので、5月に行う展示の予告です。
(左プロフィール欄参照。)
タイトルはいつも困るのですが、今回展示スペースを貸して頂くカフェNOMADさんに画を見て頂いたとき、マスターの奥様のようこさんが、「なんか音楽が聞こえてくる感じがするわね」と仰有ったところから思いつきました。
年月が経った、古い何でもない町の建物たちから、声高ではないけれど、小さな旋律が聞こえてくるような、そんな愛おしさを感じて頂ければと思います。
一年独習したDTPで、何とかDMのデザインもできあがりました。以前メールを頂いてお送り先のわかっている方には、4月に発送致します。その他のかたで、御希望の方、店舗などにまとめて置いて下さる方はメールをお送り下さい。(コメントのneonをクリック。)
今日のこの手描き地図でわかるように、曙ハウスのあった場所のすぐそばです。

裏話になるが、今日は画でなく愛用画材を並べてみた。
私の画を見て、「これは何画?」と聞かれると答えに窮するのだが、これらをご覧になって何画と言うべきか、ご判断頂ければ幸いです。
というわけで左上、ジェッソ君。普通は下塗りに使うものだが、私はそのままこれを背景色としてしまう。(これは有元利夫のやり方に少しヒントを貰った)。画像に白いへらのようなものがあるが、これで画面に塗りつけたり、ばさばさになった平筆で塗ったり。白いボードが、愛用の麻紙(まし)ボード、サイズF0。5ミリ厚の板に白い麻紙を張り込んだもの。滲まないようにドーサという液体がかけてある。これは日本画用の画材。かつて日本画学習時代に使っていて、そのまま現在まで使用。この上にジェッソをかけると、好い具合の肌理が残り、風合いも出る。こんな邪道なやり方をしているのは私ぐらいだろう。
チューブ状のものはアクリル絵の具。だいたいこの10種くらいのグレーを基本に、適当に混ぜながら使っている。メーカーもばらばら。色が気に入るとどこのでも使う。ターナーのアクリルガッシュで和風の色名シリーズを出しているが、紅梅色や淡水色は建物の色によく使う。どちらか言うと、ソフトタイプが好きである。

たまたま過日、小石川方面を歩いていたところ、出くわした建物があった。というよりもうこれは建物「群」であろうか。なだらかな斜面の裏通りに、十軒の長屋がぴったりと軒をつらねて並んでいる。軒が低いので十軒あっても威圧感もなく、愛すべき建物たちに見える。本当はアルミの引き戸やクーラーの室外機などが少し興を削ぐので、(見方によっては面白いこともあるので、さりげなく描いた)そこは描き手の気持ちで換骨奪胎。一番角の家屋は「文巧社」という看板を掲げており、他にもクリーニング店なども入って一応現役か。
そのあと文京シビックセンターの26階からこの辺りを見降ろしてみたが、ビル群のなかにこの細い通りがあえかに見えた。木造の色合いは、殺伐とした街なかに、静かに遺っている建物の息づかいを感じさせてくれるのだ。

今日の「Kai-wai散策」http://mods.mods.jp/blog/「高架下のバラック群」を見て、あっmasaさんに先を越された!と一瞬思ってしまった。実は私も今日、ちょうどこの町屋のガード下の画をアップしようと思っていたからだ。私の取材したのもちょうどmasaさんの撮られた写真の並びのところで、アンテナが飛び出しているのが面白かったので描いてみたのである。写真ではないし、敬愛いたしますmasaさんとシンクロするのはかえって僭越ではありますがアップいたします。
町屋へは毎週水曜日に、2年生の次男のスイミングのお供で行っているのであるが、京成線のガード下は味がある。通るのがちょっと憚られるような闇を孕んだ部分が随分あって、そこをくぐってみるのは一種迷宮のような感じさえするのである。

昨年の十月に、「谷中芸工展」という催しがあった。谷根千地域で活動するアーティストたちが、それぞれの作品活動を発表するというもので、スタンプラリーなどもあって、散歩しているだけでも愉しいのだ。その折に出会ったのが、谷中銀座の近くの細い路地を入ったところにあるステンドガラス工房の「nido」さんだった。
nidoは3人の若い女性アーティストによってたちあげられた工房で、かつて洋裁学校だった古い家屋を自分たちで改造して、店舗も兼ねている。初めてここを訪れた途端、もうすっかり私はファンになってしまった。中のインテリアをはじめ、並んでいるガラス作品は、よくあるステンドガラスの作品とはちがって、シックでいて可愛さもあり、そして何と言ってもほんのり温かいのだ。
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