
以前の個展をご覧になった方から、画のリクエストを頂いた。2003年個展の折の、「立会川」(たちあいがわ)という作品。
かつて江戸には二つの刑場があって、ひとつが南千住の小塚原、もう一つは品川の鈴ヶ森であった。現在は南千住のほうは貨物の引き込み線が敷かれ、回向院という寺だけが往時を偲ぶものとなっている。鈴ヶ森は第一京浜に近い喧噪のなか、碑が残っている。両方とも、近くに泪橋という地名があり、罪人は縁者とそこで別れたという。
この暗い歴史を持つ二つの町を歩くと、やはりどこかすがれたものを感じるのだが、鈴ヶ森の刑場跡からやや北にいったところに、立会川という川がある。そこに沿っていくと、東京湾に続く運河に出る。その途中の風景がこの画である。
何と言うほどのこともない景色なのだが、運河にせよ海に近い感じというのは心を遠くに運んでくれる。独りでここを歩くと、海風を感じて不思議にからだが透きとおるような気さえしてくるのは、私だけだろうか。
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