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N的画譚

N町在住、陋巷の名も無き建築物を描くneonによる、日日の作画帖です。
幻燈


16,17日は根津神社の秋祭り。今年は特に「御遷座三百年大祭」というもので、三基の本社御輿が巡行するとかで、これは戦後初めてのことだそうだ。明日が本番であるが、今日も根津の七ヶ町からそれぞれの御神輿が出て賑わった。御神輿を担いだ人には、お弁当と入浴券が配られる。終わったら宮ノ湯で汗を流して下さい、というわけだ。

私の家のはす向かいに、この町内の御神輿の発着する御神酒所があり、朝からお囃子の音が賑やかだ。町名を染め抜いたいなせな法被を着た男衆が往き来する。
夕暮れになると、いつもは暗い路地に、この時ばかりはぼんぼり型の提灯が点々とつく。この色が何ともふんわりした淡紅色で、華やかな中にもほんのり寂しさもあるような、切なくなつかしい色なのである。
遠い昔の夜の空気にふっと触れるような、そんな気持ちにさせてくれる色。まるで幻燈のような。
多分私は、こんな色を描きたいのだ。

明日は今日にもまして賑わうであろうこの町。
やっとひっそりした夜の時間に、すずしい風がほんの少し、灯りを揺らしながら過ぎてゆく。
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