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N的画譚

N町在住、陋巷の名も無き建築物を描くneonによる、日日の作画帖です。
河口のバラック


JR鶴見線の「国道」駅から降りて少し歩いた鶴見川河口のところに、嘗てずらりと平屋の襤褸バラックが並んでいた。以前はこの辺りは漁業に従事している家がほとんどで、今でも通りには魚屋が多い。貝の店が目に付くから、嘗てはは随分採れたのだろう。

20年前、この近くに半年ほど住んでいたことがあるのだが、当時の眺めを想い出すと、本当に時代を間違えたかのような錯覚を覚えるほど、何とも寂れた、しかしなつかしい気持ちになる。

私が幼かった昭和40年代には、まだまだ周囲に「貧しさ」の匂いがあり、そしてそれが普通のことだったように思う。着る服はおさがりだったし、穴があけば繕う。卵が足りないから隣の家に1個借りに行く、なんていうこともあった。

このバラック街も、2年前にすべて取り払われて、今はまっさらなコンクリートの遊歩道ができている。あの、翳りを抱えた襤褸小屋たちと引き替えに、一体何を得たのだろうと、影ひとつ無い、溢れんばかりの秋陽のなかでふと想う。

[河口のバラック] 13×27cm 2004
麻紙ボードにジェッソ、アクリルガッシュ、パステル、色鉛筆、ミリペン
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