
普段町歩きを独りでしているときは、土地の高低差などまったく念頭に置いていないのであるが、昨日行われた「第四回アースダイビング」では、初めてそれを意識して歩くこととなった。
王子のあたりもゆっくり歩くのは初めてだ。石神井川の現在までの成り立ちに諸説あるなどとは知らなかったし、今は暗渠となっている箇所を辿っていくというのも、いちいち感心するばかり。今後は多少なりともこうした意識を持って、未知・既知の町を歩いてみようと啓発されました。
半日歩いたなかで、私がとても気になった建物が今日の画。
暗渠となった音無川に落ち込む斜面部分に沿って、三階建ての住宅が並んでいる処があり、何となく築地などの旧水辺バラックを彷彿とさせる趣だったのだ。建物はそう古くもないようだったが、隣接する家との間の斜面に、吃驚するほどほそーいコンクリ階段が造られていた。人がやっとひとり通れる狭さだが、日常生活にはなくてはならないものなのだろう。(画は実際の建物をだいぶ換骨奪胎しております、毎度ですが。)
最後になりましたが、入念な下準備とご案内をして下さったiGaさん、masaさん、そして最後の素敵な打ち上げ場所の「とも」(墨田区向島4-23-1、tel.03-3624-9078)を手配して下さったLOVE GARDENのcenさんyukiりんさん、参加なされた皆様、愉しい一日をありがとうございました。
[ほそーい階段] 2006 14×12cm
きなりの紙にミリペン、鉛筆、サインペン

秋口に、高梨豊さんの「初國」という写真展を見に行った帰りにこのアパートに出くわした。つめたい秋雨があがった後で、アスファストがまだ独特の匂いを放っている暗い日だったが、都心の真ん中のビル街を近くに見ながら、この一角は一層湿気を保っているようだった。付近を歩いてみれば、何だか古い町名の表札や、がたぴしのアパートがかなりあって驚かされる。
そのなかでも、この一軒は特にどうという特徴のあるものではなかったが、真横から見ると窓や庇、階段の組み合わせも面白く、臭突が真ん中で建物を統括しているかのよう。そして何より全面グレーのモルタルなのだが、雨後の染みなのか長年の風化なのか、濃淡の意図せざる滲みが壁全体にできている。それがどうにも好いのだった。
肩肘張ってばかりいないで、滲んでよ、たまには。
[グレーのアパート] 2006 12×18cm
きなりの紙にミリペン、筆ペン、色鉛筆

根津と千駄木のちょうど間の交差点の角に、この建物がある。
と言っても、実際はもっともっとボロボロ状態で、この画を見て探しても判らないかもしれない。
「ヤナヰ」という屋号も、よく見ないと読み取れない。建物の裏側はもっと酷く傷んでいる。
根津のあたりでは、時々古い建物をスケッチしている年配の方を見かけるが、此処を描いて居る人には会ったことはないし、不忍通りの車の喧噪と排気ガスまみれになっているこの建物は「見たままを描く」人たちのモチーフには、なかなかなり得ないだろう。
だが佇んでよく見ると、この建物自体の形はなかなかユニークで美しいのだ。汚れてボロボロでも、形自体の佳さに純粋に惹かれることが私はよくある。それで私はこの建物の在りし日の姿、を、いとおしく描いてみたい気持ちにかられたのだ。大袈裟な言い方だけれど、どんな建物を描くときでも、どこか夢見るような部分を描いてみたいといつも想いながら筆をとるのである。
[ヤナヰ商店] 2005 14×18cm 個人蔵
麻紙ボードにジェッソ、アクリルガッシュ、パステル、ミリペン

過去の作品にはあまり拘らないたちで、展示が終わってしまったりすると何処へしまったか忘れたり、記録をちゃんととっていなかったりするものもあって、後からあれどうしたっけな・・・と探し回る体たらくである。
そして、最近は少ないが、完成しないまま、日の目を見ないまま捨ててしまった作品もある。
その一枚がこれである。
画像で見ると何だかちょっとはマシに見える気もするが、それは画像に騙されているせいである。自分では、この作品がうまくいっていない理由はよくよく分かっているのだ。
特に画面下半分の建物部分を、よく練らないうちに描き始めてしまい、
途中でどうにもこうにも行かなくなって来たのである。何となく雰囲気で誤魔化そうとしたが、やはり駄目であった。で、描いた当時(2000年頃)はアクリル絵の具も余り使っていなかったので、上に絵の具を重ねて直すこともできずに、結局破棄してしまったのだった。
捨てる前に写真だけ、何故か撮ってあったので、今になって少し再検討して、また練り直してみようかともちょっと思ったりする。でもだからといって、とっておけばよかったとはあまり思わない。過去の作品がこれからの作品の土台になればそれでいいと思ってしまうからだ。
モチーフにしたのは浅草の花やしき裏。
祝祭的な感じに、一抹の哀しみが滲み・・・と、気持ちだけはできていたのだが、それを表現しつくすのは、やはり難しい。
タイトル無し
確か12号くらいのサイズ 2000年頃
麻紙ボードにパステル、顔彩、岩絵の具等

鶴見の続編です。
オラガビールに行く途中の目を惹いた建物、美好食堂。2階は棟続きなのに1階は三店舗が並んでいて、横にも階段屋根が斜めにくっつき、面白い建物だった。2階の木造の造りも好かったし。
と、のんびりアップを考えていたら、GG-1さんのほうに早速アップされていましたので、スケッチ崩れではありますが、同時に見る方が一興かと思いこちらも出させていただきました~。
[美好食堂] 2006 15×20cm クロッキー帳に鉛筆

9月某日、好天、風少々強し。カークさん×GG-1さん×neonという風変わり(?)な凸凹三人組が鶴見の小さな某駅に集結。夏にカークさんがブログの中でアップなさった写真の建物に惹かれたGG-1さん、neonが、先達カークさんの案内で目指すは川沿いの工場廃墟へ。。。
しかし歩き始めると、あちこちに寄り道物件をそれぞれ発見。立派な看板を掲げた酒屋さん、錆トタンの食堂、ミドリトタンのアパート、廃味濃い従業員寮?、にょきにょき沢山の煙突が生えている謎の工場、・・・さすがに鶴見。驚いたり感心したりで、話も弾むカメラも弾む?の珍道中。
ぐるぐるしながら、ようやく目指す目的地、「オラガビール」工場廃墟に到着。。。

iGaさんが昨日、「Kai-wai散策」11/4のコメントの中で、「neonさん、どうぞお泣きください」と書いて下さった。何のことかと言うと、今度連れて行っていただくアースダイブの歩行予定地に南千住、三ノ輪付近が含まれており、私がほとんど泣いて喜ぶようなトタン物件が目白押しだということ。ハイ、わたしゃ泣きますから。ほんとに好きなんですから。
ということで、南千住、三ノ輪は数年前から何度か独りで歩いたこともあり、カフェバッハのコーヒーや、三ノ輪丸玉の蜜豆には時々お世話になっている。
勿論建物はいつ行っても素晴らしく、まだまだ全てを把握し切れていないから、何度でも行きたいのである。
で、まだブログに出していなかったこの画を想い出して出してみた。これは南千住の物件で、もとにした写真が下である。ブルートタンが眩しいねぇ。Nomadの展示に出していた一枚だが、店主の奥様ようこさんが「この青の色が好い」と言って下さり、現在Nomadさん所蔵となっております。
[Totan blues] 2005 14×18cm
麻紙ボードにアクリルガッシュ、パステル、色鉛筆、ミリペン

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