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N的画譚

N町在住、陋巷の名も無き建築物を描くneonによる、日日の作画帖です。
滲んでよ


秋口に、高梨豊さんの「初國」という写真展を見に行った帰りにこのアパートに出くわした。つめたい秋雨があがった後で、アスファストがまだ独特の匂いを放っている暗い日だったが、都心の真ん中のビル街を近くに見ながら、この一角は一層湿気を保っているようだった。付近を歩いてみれば、何だか古い町名の表札や、がたぴしのアパートがかなりあって驚かされる。
そのなかでも、この一軒は特にどうという特徴のあるものではなかったが、真横から見ると窓や庇、階段の組み合わせも面白く、臭突が真ん中で建物を統括しているかのよう。そして何より全面グレーのモルタルなのだが、雨後の染みなのか長年の風化なのか、濃淡の意図せざる滲みが壁全体にできている。それがどうにも好いのだった。

肩肘張ってばかりいないで、滲んでよ、たまには。


[グレーのアパート] 2006 12×18cm
きなりの紙にミリペン、筆ペン、色鉛筆
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