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N的画譚

N町在住、陋巷の名も無き建築物を描くneonによる、日日の作画帖です。
かわいい平屋


東京は高層建築ばかりが増えているけれど、ときどきぽっかり穴の開いたような空間にひっそり残っている平屋の建物に出会うと、いとおしさに立ち止まってしまう。年月を経た木造の色の滋味、トタンや塩ビ板の修復パッチワーク部分の茶目っ気。がたぴしの硝子引き戸のなかのカーテン。傷んだ庇。アンバランスに高く延びたアンテナ。
どんなに襤褸でも、つい可愛く描いてやらずにはいられない気持ちになってしまう。否、「描いてやる」ではなく、こうした無言の建物たちにこちらの心が和まされ、「描かせてもらって」しまうのだ。

こうした名もない建築たちは、勿論「保存」のほの字も浮かばないまま、時が経てば解体されてゆく。その自らの滅びさえあるがまま受け入れていくような、そんな小さき存在が故に、いつも限りないいとおしさが余韻を曳く。


[かわいい平屋] 2006 14×18cm 個人蔵
麻紙ボードにジェッソ、アクリルガッシュ、パステル、ミリペン、色鉛筆
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