
陋巷画日記・8.
嘗て描いた景色、建物に今一度出会うのは不思議な感覚である。
2003年の個展の時に出品した「春の雪」という作品は、東日暮里のとある往来を描いたものだったが、先頃そのモチーフにした場所を通りがかったら、変わらずにそこがそのまま現れたので、寧ろびっくりしたのである。
此処は陋巷という言葉そのもののような、御覧のようなたたずまいで、そのすがれぶりはちょっと暗然としないでもないが、やはり未だこんな闇を孕んだ部分を抱いているのは、この町の懐の深さ故ではないか。
赤錆びた物干しが何とも言えずくすんだ紅い屋根とあいまって、いつ無くなっても不思議はないこの陋巷に、また暫し感慨を覚えたのである。
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