

コドモの頃読んだ本で、斎藤惇夫作・藪内正幸画「冒険者たち」というのがあり、今でも大切に1973年刊牧書店発行の厚いハードカバーのを持っている。ガンバというドブネズミが主人公で、ひょんなことから大変な冒険に巻き込まれる話。ワタシはこの本で「郷愁」という言葉を学びましたねえ。(後にアニメにもなったが、あれは画がちょっとお粗末すぎた。藪内さんの克明な挿絵の格調の足下にも及ばない。現在原作は岩波少年文庫に入っている模様。)
そのなかに、色々な個性溢れるネズミの仲間が登場するのだが、ワタシがいっとう好きだったヤツが、「イカサマ」という名前のネズミ。いつも耳のなかに2コのサイコロを入れていて、どんなときでもこのサイコロを振って、丁か半かで進退を決める。なかなか格好いいじゃござんせんか。年端もいかない頃からこういうイカサマ野郎に惹かれちまう、ワタシだったのでアリマス。
で、という訳でサイコロ。
neonサイコロがお目見えです。・・・いえいえ残りの人生これで決めようっていうわけではないのですが、ちょうどいい木片があったので、つくってみました。(大きさは3cm角)
絵柄は御覧のような感じです。
これに合うステンドガラスのボックスを作って貰い、nidoコラボ展(4月末の連休頃になりそうです)で並べますので、是非お手にとって振ってみて下さいませ。
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何度もそこへ立ち返って、自分の心根、或いは創作の在処を探す、
そんな風景があるとしたら、ワタシは何と言ってもこの朽ち果てゆく川沿いの風景を挙げるだろう。
鶴見川に沿った生麦の川縁。もうほとんど海岸といっていい場所だが、
ここに嘗てボロボロのバラック街があったことは何度かこのブログにも書いた。
二十世紀末までこの風景は残っていたが、今は綺麗サッパリ護岸工事が行われ、
こんな風景は幻の光景と化している。
この、湿った、朽ち果てようとする風景をありありと想い出し、
画面に描こうとするとき、
<まとまろうとするな、安定するな、安定する構図のために線を描き足すな>
と或る人に言われたことを想い出す。
そして時々、自分をそうやって揺さぶることにしている。
このうらぶれた風景が、
今尚、多くのことをワタシに向かって語ってくれるのだ。

横浜の元町は、ワタシの生まれ在所の本牧から近かったせいもあって、小さい頃から随分歩いていた筈なのに、華やかな店や通りにしか目が行かなかったから、こんな一画があると知ったのは昨年のことだった。
元町の大通りのすぐ裏側で、今まで何故気が付かなかったかと不思議なくらいだ。だが表側は普通の商店で、ここはその裏側なのだが、昭和なたたずまいというよりも、アジアの何処ぞの裏通りのような雰囲気だった。
生まれ育った町というのは、身近すぎて気が付かないものも多いし、写真を撮ったり画に描いたりすることも無いことのほうが多いものだ。だから時にはよそ者の目で郷里の町を歩くのも悪くないし、また永井荷風のような富貴閑人が歩いて記録に留めてくれるのは、そこに住む人たちにとっては馬鹿馬鹿しくても、貴重な記録になったりする・・・ことを思うと、有り難いものだとも思ってしまうのである。

ワタシの住んでいる根津の町にも、昔は幾つか映画館があったそうだ。
今は残念ながら一軒も残っていない。
「映画館のある町」「場末にピンク映画館のある町」
というのは、どちらも今は何となくノスタルジーを誘うような響きさえある。
映画館の建物も、そこへ通った人にはたまらなくなつかしいものがあるだろう。
とくに戦前の建物は、モダンなもの、小さくても味のあるデザインのものが随分ある。
写真でしか見られないのが口惜しいような、凝ったものも多い。
画に描いたのは、そんな幾つかを参考に、自分なりに拵えた小さなシネマ館。
ちかちかネオンに彩られた、ひとときの憩いの場所です。
*これもnidoコラボ展用。小さな板に描いております。どんな硝子の額が付くかお楽しみに!
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