突然ですが、この度、画材店の世界堂主宰の「世界絵画大賞」に於いて、拙作品が協賛社賞を受賞致しました。(これから何とか賞という、会社名が付く予定。)
受賞者展が下記のように予定されておりますので、新宿方面においでの節はご高覧いただければ幸いです。
会期:2008年10月20日(月)~29日(水)
場所:世界堂新宿本店6F AM9:30-PM9:00
受賞作はタイトル「Barracks」。
巣鴨の陋巷チックなトタンバラックを側面から描いた画です。(M20号)
このブログの「質感の表現」という記事で、途中経過の部分を出していた作品。今年の夏の終わりに描いたものです。画像は展示まではブログにはアップしませんので、できれば実物を御覧いただければ嬉しいです。
団体にも所属せず、師も仰がず現在は徒手空拳の無手勝流もいいところですが、こういう場で賞を頂けたのは、励精して下さる皆様のおかげです。心より感謝致しております。
とりいそぎ、ご報告まで。
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いつもひとつの本画作品に取りかかる前には、下描きとも言えるアイデア・ドローイングを無数に描く。
いや無数というのは大袈裟。一回で巧く形が納得いくことも無いわけではない。
とにかく最初は撮ってきた写真を見ながら感ずるままにかたちを造っていくが、往々にして最初は実際の姿に近いものが多いか。
そこから何度か試行錯誤してみる。
とは言えこれもなかなか面白い作業なのだ。一枚の画として過不足がなく、遠くから見てもぴんとした緊密な、好い意味で張りのある形をしているかどうか。
最近はだいぶそのことに気が廻るようになり、全体のフォルムを練り上げることのプロセスの愉しさを、多少なりとも感じるようになった。
だが「緊密」さを思うが故に、嘗てはかなりタイトな線描に固執し、それはそれで悪くはないのだが、年齢を重ねるごとに、少しは心境に余裕のようなものが出てきたのか、必ずしもタイトなばかりでなくともいいか、という気にもなってきたのである。
最近は、一見直線に見えてそうでない線や、歪みひずみのオマヌケ要素を実は盛ってみたりしているのだ。
味のある諧謔味、清涼な洒脱。
好いなあ、そういう画。
志だけは、やっぱり高く持ちたいよね。。。

シンプルな色や形。
そんなものへの憧れがいつも画を描くときにあるのだが、実際描こうとすると色々な要素を入れたくなってしまう。
見たままの素描の積み重ねはとても大事だと思うのだが、そこから自分としてはもう一歩オリジナルな表現を試みたい。だが対象の建築物の存在感や素材感、辺りの空気感、そうしたリアルさを失っては画が訴えて来なくなる。どこまでどういうふうに引き算していくかが、いつも自分にとっての課題だ。
今日の画は川っぷちのボロ錆トタンバラックをモチーフにしたのだが、この建物はアイデアラフ描きを試しながら、どうしてもちょっとモダンな感じにしてみたくなった。形がシンプルでとても好かったので、ボロ錆の感じを出しながらも伊達男な仕上がりにしてやりたくなったのだ。
色数も抑えつつエッジはぴしっと。
そんな感じに描き上げてみたのだが、どうだろう、やさぐれてはいるが一本芯の通った奴になったであろうか。



一晩ごとに秋らしくなっていくようなこの季節。
ずっと待ちかねていた本が手元に届きました。我が家から徒歩1分のところにあるアンティーク着物店「Ponia-pon」の店主、大野らふさんの著書。タイトル「大正ロマン女子服装帖」~。
以前にもちょっと紹介したこのお店は、大正~昭和初期にかけての着物や帯を扱うショップで、アンティーク着物ファンには目を離せない一軒。大野さんの審美眼にかなった着物達はどれもうっとりするような代物ばかり。その質の高さ、また大野さんのポニア風コーディネイトも定評があります。
そのファン垂涎のコレクション、コーディネイトがこの一冊にぎっしり。
そして実は、ほんのちょっぴりですが、この本の制作過程を覗かせて頂くという幸せに預かることがあったのです。
着物と帯の単品撮影の現場が、私の家のすぐ近くであるというので、是非にとお願いして半日覗かせて頂いたのでした。普段お店には置いていないとっておきコレクションのうつくしい着物の数々を目の当たりにでき、撮影の済んだそれらを端から畳むお手伝いをさせて頂いたのですが、眼福の至り。。。
中でも、画像アップした縞の散歩着や、本に掲載されている電車柄?の帯などは、そのデザインの素晴らしさ、懲りようにエクスタシーすら感じましたね~、ほんとに。大野さんも、「こういうのに出会えるから、この仕事に命をかけてしまうのよね~」というようなことをぽろりと。。。そこまで惚れてこその仕事でしょう。
大正から昭和初期にかけてというのは、今からは想像できない素敵な時代であったのではと思うことが屡々あります。作家の林真理子サンがたしか、彼女のお母様世代がちょうどこの時期で、「戦争前のこの時代に素晴らしいいっときがあった」というようなことを何かに書いていたのですが、この時期の着物と言い建物と言い、想像を遙かに超えた自由さと浪漫とが横溢していたように思えてならないのです。私の画を描くときにも、こうした色やデザインはどこかに影響している筈です。
というわけで、この秋もどっぷりこの着物の世界にはまりそうな私です。
一番右の画は私がこの秋に試してみたい取り合わせ。柿色+曙色+藤色が主体の着物にモダンな感じの古い帯締めがポニアさんのもの。袷を着始める来月が愉しみです。
夕方写真追加:
昨日今日と根津神社のお祭りで、我が宮永町会の御神輿も、雨にも負けずいなせな男達に担がれ、我が家のはす向かいを出発し、Ponia-ponの前を通り、神社へと繰り出して行きました。この近所は鳶の方も多いので、若い衆の雰囲気も江戸っ子そのもの。好いなあ、やっぱり伝統の気風って。




あかいろ、と言ってもそのバリエーションは余りにも豊富で、一口には片づけられない気がしてしまいますが、中でも特に私が反応してしまうあかは、着物の紅絹(もみ)の色だと思います。朱よりも緋、紅、という言葉にちかいイメージ。昔の着物の長襦袢によく使われた色で、紅花をつかって染めていたのは、身体に善いとされていたからだと何かで読んだことがあります。
そんな色の画が出てきたのでアップしました。
もう十年も前の作品ですが、この頃は背景にパステルを多用して、かなり塗り込んでおり、触るとまだ指にあかい色が付いてしまいます。そこに、白の線描だけで描いた町。
何処というモデルはありませんが、記憶の中にある過去暮らしていた町のような気もします。
緋い、紅いまなうらの町。

或る日の事でございます。
蒸し暑い暮れ方に、私の粗末な部屋の扉を叩いた者がおりました。
扉を開けてみると、そこには見知らぬ白い鬚の痩せた老人が立っていました。
「アナタは陋巷を描いている絵描きだと聞いたが、一枚雨の陋巷を描いて貰えんじゃろうか」
「わかりました・・・」
しかし、簡単に引き受けたものの、一体何処の町をどう描いたらよいか・・・
筆は進まず、私はふらふらと足の向くままあちこちを徘徊し、疲れ果てて気づいてみると、
あたりは薄暗く今にも雨の降り出しそうな気配。ああもう立ち去らなければ、
・・・と、忽然と私の眼の前に、低い軒の翳った建物が現れたのです。
よく見ればぞっとするほどに荒れ果て、屋根も抜け落ちて、草木が内部まで浸食し、それでもてらてらと錆びたトタンの壁ばかりが光り、そして異様なまでの静けさが漂っているのです。
その、暗さの極みのような建物に、何故か心打たれ澄む想いになった私は
必死で素描を始め、何とか描き終えた頃には辺りはとっぷりと暮れ、ぽつぽつと細い雨が降り出しました。
そのあとどうやって家に帰り着いたのか、おかしなことにほとんど記憶がないのです。
ですが部屋に戻った私はその素描をもとに、老人の所望する雨の画を描きあげたのでした。
しかしその後、いくら待っても老人は現れなかったのです。
私の手元には、渡せないままの何処ぞの場末の、あの雨の画が今でもずっと残してあるのです。
(物語はふぃくしょんです。たは~*)
(帰った記憶がないのは、帰りに飲んだくれたからだとか、老人が来ないのは死んじゃったんでしょとかそういうツッコミは、・・・あ、入れてもいいすよ~)

あんびるえつこ著「お金のしつけ」(PHP文庫)、只今全国書店にて好評発売中です。
三省堂では現在平積みしてあるという情報。
是非お近くの書店で御覧になってみて下さい。
いつも建物を描いている私が、今回人物イラストのお仕事を引き受けたのは、著者あんびるさんとはコドモの学校でのママ友達であったのでした。生活経済ジャーナリストとして活躍中のあんびるさん。普段から取材や原稿書き、講演など多忙な生活ですが、チャーミングな二児のママでもあります。
偏屈カワリモノママである私なんぞとも、何故かウマが合い(いや多分合わせて頂いているんだよね)、たまにコドモや仕事などの話なども忌憚無くできる、数少ないママ友達のひとり。
で、この著書のイラストのお話をいただいたのですが、普段人間を描かない私に何で・・・
「知らない人に頼むのがちょっとね~。」
あ、そういうことか~。
でもそれは実はすごくよく解ることなのでした。こういう共同作業には、意思の疎通というものがあるかないかで、大きく左右されるモノ。いくら高名な人であっても、互いの理解の上に作業していかないと、好い仕事にはならない、そしてそれは時間も労力も或る程度要るわけで。その点、私は頼みやすい位置にいたということですね。
逆にそれならという気楽な気持ちにもなり、時間も或る程度頂けたので、ゆっくり楽しみながらイラストを描いていくことができました。
お金の教育、というのは本当にムツカシイ。
でも今、本当に必要なものであると私も子育てをしていると思います。
そして母親だけでなく、勿論父親、そして祖父母、友達の親、そうした環境にいるひとりひとりが、もっと真剣に考えるべきことのような気がします。
あんびるさんのこの本は、とにかく読みやすい。(読みやすく書くというのはとても難しい。)我が家のコドモも結構夢中で読んでおりました。
そして目線が優しく、それでいて冷静に現状を捉えてその解決方法を提示してくれています。
是非是非お手にとってみて下さい。
画像は、イラスト下書き帳より。本文第4章の扉のために走り描いてみたもの。色々なママたち。こういうバリエーションというのは描いている本人も愉しいもんです。
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