

年の瀬も押し詰まって、今年も町角で正月飾りの出店が立つようになりました。
来年の展示に備えて・・・ということもあり、このところアイデア・スケッチをクロッキー帳にがしがし貯めて描いています。
そのなかから、2点を小さなF0サイズの画に描いてみることにし、麻紙ボードに鉛筆で下描きし、ジェッソを塗ってみました。これから彩色です。
左は何度か作品にしている横浜日ノ出町のかもめ座という映画館。
右は鳩の町のバルコニーのある家を元にして描いたもの。
何かと慌ただしい毎日ですが、いっときだけでもゆったり落ち着いて、画面に向かう時間は好いものです。
一昨日はnidoにちょっと寄って、来年の展示の話など少ししてきました。お互い話し出すと、何だか色々なアイディアが出てきて愉しくまた頼もしくなります。
皆様本年もお世話になりました。
これからも淡々とやっていきたいと思いますので、どうぞ来る年もよろしくお願い致します。
かもめ座の場所、勘違いして鶴見と書きましたが、誤り。正しくは日ノ出町です。
訂正いたしました(12/28)。
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先日、好天の日に目黒区美術館で現在展示中の「ひろしま/ヨコスカ 石内都展」を見に行った。
ワタシは以前から石内さんの写真が好きで、もう10年以上前に手紙を書いたりしたこともあった。
ワタシが旧遊廓の建物を描いて居た頃、某編集者に「そういうのを撮っておられる写真家がいますよ」と教えられたのが石内さんだった。見せて貰った写真(連夜の街)に、非常に惹かれた。こういう画が描けたら、などと不遜にもよく想ったものだ。それで、同じようなモチーフで描いていた自分の個展の時に、厚かましくも案内状をお送りしたと記憶している。そうしたら、ちょうど海外へ行くので行かれないけど、頑張ってねといったお返事を思いがけず頂き、嬉しかったのを覚えている。その後も数回、お手紙でのやりとりがあった。
今回の展示は集大成のような充実した展示で、詳しく述べると長くなるのでここには書かないが、今までの石内さんの仕事がほぼ一望できるような感があった。
そして今回の図録がまた素晴らしいのである。
ずっしり重いなかに詰まっている内容は、全集に近い。
ワタシの好きな「連夜の街」の作品も多く所収されている。
この他に、やっぱりヨコスカを撮られたものがすごく好きである。
ざらついたモノクロの画面、そこに写し出されているのは荒涼とした、色あせた、否しかし何処か息づいて充血したような町。鳥肌のたつような、惹きつける力が写真のなかに籠もっている。
帰りがけに、何とご本人に偶然遭遇した。ちょうど取材があるということで、館に見えたところだった。
あまり側に人もいなかったので、名乗ってみたら不思議にも覚えておられ、「また何かあったら連絡ちょうだい。前と同じ処にいるわよ」。図録の表紙に、サインを快くして下さった。
思いがけないおまけのついた、幸運な一日となった。
ワタシの画が少しでもお好きな方には、多分解って頂ける展示であります。
***ひろしま/ヨコスカ 石内都展
2008.11.15 -2009.01.11(日) @目黒区美術館
石内都 (いしうち・みやこ、1947年、群馬県生まれ、横須賀育ち。現在は目黒区在住)
1970年代半ばから、横須賀の街や風景の写真を撮りはじめる。高度経済成長を遂げた戦後日本の裏側のさまざまに複雑な表情を、「ヨコスカ」の街や風景に読み取るかのような写真作品は注目を集める。
1979年、東京圏のモルタルアパートなどを撮った写真集『APARTMENT』で、木村伊兵衛賞を受賞。
やがてその関心は、個々人の生の歴史の重さを「身体」から読み取ることへと向かい、『1・9 ・4・7』を発表。また今年は、被爆前の広島の人々の生活を想起させる、広島平和資料館所蔵の被災衣裳を撮影した約40点の新たな連作「ひろしま」を完成。写真集「ひろしま」2008年4月26日発売。
前後するが2005年には、ベネチア・ビエンナーレ出品作の帰国展示(『Mother’s』)が東京都写真美術館で行われる。
目黒区美術館展「ひろしま/ヨコスカ」は、初期から現在の国際的な活躍に至るまでの、写真家・石内都の軌跡に、東京初公開の新作『ひろしま』を加えて、その仕事の全貌を紹介する充実した内容。


もうひとつ、以前に装幀の仕事で描いた原画がお嫁入りすることになりました。
小学館刊、山田宗樹著「ランチ・ブッフェ」の原画。
あまりに横長の画ですので、額は武野さんにお願いし、いつもながらですが、イメージにぴったりのものを作成していただきました。
お嫁入り、とはいえごく近所のお宅の玄関に設置予定なので、そちらに伺えばまた会えるという、身近な嫁ぎ先です。
・・・蛇足ですが、こういう額入り画を写真に撮るのって難しいですね。
自分が写り込むし、額は歪むし。。。
少し撮影方法を勉強して上手になりたいものです。

繰り返しくりかえし、ワタシが描いている、そしてこれからも描き続けるであろう建物がある。
今回の画もそうで、実は前回にアップした画とモチーフの建物は同じである。
今回のは前回よりも尚遡る1994年に描いた小さな作品だ。
そしてもとにしている写真は、さらに遡る1988年に自分で撮影したもの。
勿論現在この建物は無い。
この画では実際とは部分的に随分変えて描いているのだが、全体の雰囲気はこんな感じであった。
不思議な美しい建物だった。
タイルとステンドガラス、洋と和、純粋と猥雑、光と闇。
おそらく間違いなく、ワタシの生涯に於いて見ることのできた「最も美しいもの」のひとつに入るであろう。そうしたものにこの世で出会えたことの、シアワセと不思議な縁を想う。

前々回の記事を見て、ギャラリーツープラスさんから「来秋うちで個展やりませんか」という有り難いオファーをいただいた。やはりウレシイことである。二つ返事でお願いする。
自分の中ではまだ大して形になっていなかったのだが、俄然枠組みがハッキリしてきたので、非常に励みになるが、「あまり肩に力を入れすぎないで楽に」とツープラスさんに言われる。
ハイ、その通りですね。。。
今現在の気持ちとしては、旧遊廓のカフェー建築のようなもの・・・それは嘗てワタシが随分テーマとして描いていたものだが、それをまた新たに、今の気持ちで描きおろしてみたいのである。
画像にアップしたのは、ちょうど10年前、1998年に描いたもの。
2000年の銀座での個展に出品したものだが、ネットに出すのは初めてだと思う。
久しぶりに現物を見ると、我ながら何だか劇しいものがあり、ちょっと引く感じもありますね。線がすごく多く、色もハゲシイ。描き方が定まっていないので、闇雲な感じもするが、とにかくワタシは描きたいんだという想いだけでぶつけている感じ。
これは、今はなくなってしまった遊廓街の建物を組み合わせて毀しながら(笑)描いたもの。
10年の歳月を経て、もう一度立ち返った世界を描きなおしてみたいと、
そんなふうに考えております。
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