
今年も余すところあと僅かとなった。
本年もこのブログを見に来て下さった多くの方々に感謝いたします。
さて、今年はかなり色々な展示を積極的に観に行って、吸収したものも多かった。
中でも印象に残っているものが、絵画では青木繁展@ブリヂストン美、写真では畠山直哉@写美、
そして初めて行ってみた小野忠重版画館・・・。
青木繁は、彼の作品だけを並べた展示というのは初めて観たのだが、油彩画の魅力と自由で力強い筆遣いが、やはり生で観ると想像を遥かに超えて素晴らしいものだった。
畠山直哉の写真は、こちらも初めて観たが圧倒するスケールの大きさと共に、精緻な表現が美しく、写真の力というものを改めて感じさせるものがあった。展示は自然景を撮ったもの(震災の写真含)だったが、その後に知った「LIME WORKS」という彼の代表的写真集が余りにも素晴らしくて、購入してじっくり見ているのだが、石灰岩の鉱山と工場を撮ったもので、力強い。そして美しい。
小野忠重は昭和初期から長く活躍し続けた版画家であるが、その記念館とも言うべきものが阿佐ヶ谷にあって、友人の個展に行くついでに立ち寄ってみたのだが、ご子息にあたる方が経営なさっているこじんまりした記念館だけれど、それだけにゆっくりと見ることが出来て、とても好かった。過去の彼のスケッチなども沢山ストックがあって、親切に色々見せて下さり、すっかり長居してしまった。彼の描く何でもない下町の川べりの風景や工場街などの表現の仕方が本当に魅力的だ。大好きな藤牧義夫の版画ともシンクロする部分もある。
そして新年にはその藤牧義夫の展示も始まる(@神奈川県立近代美)ので、今から楽しみにしている。
葉山館のほうでは村山知義の展示も2月にあるようで、これも行きたいのだが。
来年も多くの作家の作品を間近で見て、沢山のものを吸収したいと思っている。
それでは皆様、よいお年をお迎え下さいますよう。
惨禍に依然苦しむ人達に、少しでも明るいものが見えてきますよう。
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都内のO区まで行く時間があまりとれず、しかし少しなら・・・ということで、ここのところあまり遠くないA区に出かけている。最寄りの駅からそう遠くない所に小さな町工場が集まっている地域があるのだ。
ごみごみと立て込んだ住宅地のなかにちらほらと、らしきものが散見する。
トタンの屋根や壁は目印だ。
それで、ふと気付く。今迄随分歩いてきた町々の、魅力的なトタン物件というものは、住宅もあったが実は町工場であったものがかなりの数に上るのだ。・・・今になって合点がいく。
A区のとある地区には、そうした平屋トタンの工場が多い。そして、そう言うのは躊躇われるが、うらぶれた雰囲気である。このラフ画の一角もそうで、画的には魅力的だが、よく見ないと判らないような板きれに「××ヤスリ」とマジックで書いてあり、ああ工場なのだと思うと同時に、言い知れぬ哀しみと憤りのような感情さえ湧いて来る。こういう所でかくも地味に、埃まみれになって仕事している(いた)人々の暮らしとは、一体何であろうかと。
その一方で、先日はとても心温まる出会いなどもあったのだけれど、それはまたいずれ。

部屋の片づけをしていてふと眼に着いた過去の画帖から一枚。
(町工場、相変わらず描きなぐりつづけていますが、また次回)
吉原のある建物・・・まあ、言わずと知れた過去の容姿を、そこはかとなく残している、
扉のいくつもある建物なのだけれど、随分長いこと見に行くことも無く、
もう無くなっているだろうと半分は思っていた。
が、今年の秋に山谷のほうからずっと歩いてみたところ、これと
並びの特徴ある建物が二軒、そのままにひっそり残っており、
晩秋の陽ざしを浴びてまどろんでいるかのような姿であった。
いつの間にか無くなってしまう建物が多いだけに、
この久しぶりの邂逅はうれしくなつかしかった。
描き方は今とだいぶ違っていて、滅多やたらな線が多い気がするのだが、
尖った気持の昂りのままに細い尖った線でがしがしと描いていたあの頃。
14年も前のペン描きの一枚。

そのひとが初めて私の展示に来てくれたのは、ツープラスで初めて企画展をやらせて頂いた時で、ゆっくりと時間をかけて画を見つめて、過去作のファイルも丁寧に丁寧にページを繰っていたのをとても印象的に覚えている。
物静かなひとで、声をかけてすこしだけお話をしたように思うが、とても澄んだ瞳をしたひとだなぁと思った。
実は彼女は神戸から来てくれていて、その後もnidoのコラボや個展の折には必ずと言っていいほど訪ねて来て下さった。彼女は七宝焼きの作家さんでもあり、関西では色々なところに出展したりして、一度都内での展示に参加された時は、私も遊びに行かせて頂いた。彼女の七宝焼きはちいさな小さな作品が多いけれど、好みは私とかなりだぶっていて、気球や灯台やおうちや・・・様々なかたちが夢をまとって揺れているような世界だ。
その彼女が今年も秋の個展に来てくれて、お土産に小さな七宝焼きのカメラ形のチャームを下さった。
ものすごく可愛くて、勿論即座に私のお気に入りコレクションとなったわけだが、その時に近々彼女にお祝い事があるということを聞いた。
それではお祝いに画を描きますよと約束して、先日漸く彼女のもとに届けることができた。
「なつかしい坂の道」というタイトル。
彼女の末長いお幸せを祈って、心から。。。

来年の個展の町工場系シリーズ(錆色系のシリーズという括りにするかも。でもほぼ8割方工場になりそう。詳しくは未定)では、通常よりも細長い画面のものを多くしようと思っている。1:2というかなり極端な比率。
以前もアパートのシリーズの時に、見て下さったとある方にちょっとヒントを貰っていたのだが、「幻燈街」では実現できなかった、というよりそのサイズがあまり相応しくなかったのだ。
でも次回の工場にはなかなか面白い画面構成になるとひそかに思い、現在試行錯誤中。
工場って、細長いものが多いのだ。
だが中には住宅地に埋もれる小さなトタン家屋のような工場もある。
そういうのは町並ごと描くか。それとも。
思い切ってタテ2横1の縦長構図なんかもあっても好いかも。
今回のラフは地味めなペパーミントグリーンの工場。
この構図通り制作するかはまだワカリマセン(笑)。
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