
Y町は、出かけると決めれば案外さくっと行ける場所ではある。
小洒落た店の一軒も無ければコンビニさえ以前は少なくて、それをわきまえて或る程度の心づもりをすれば、すがれたスレッカラシには居心地の良い場所である(笑)。
車の多い通りから一歩はいっていけば、そこはもう町工場の坩堝。
日常には目にすることのないフォルムと、正体不明の匂いと、規則正しいつつましい機械音、剥き出しの金属の素材感、吐き出ている煙・・・。
この町近辺一帯が背負ってきた翳の部分のことは頭のなかに勿論置いて、だが描く素材として捉えるときは、一旦それは白紙にして、そして自分が心動かされたフォルムなどの美しさなどの要素だけを掬い取って、換骨奪胎しながら、自分だけの世界を画面にして行く、それだけ。描きたいのはリアルではなく、ファンタジーだから。とは言え多分どこかにちょっと毒を持った辛口の、なのだけれど。まあお許しを。
*****次回よりまた画をお届けする予定です。*****
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原 芳市(はら よしいち)さんの写真展「光あるうちに」@銀座ニコンサロンに伺って来た。
原さんとは、1999年にご著書の「ストリップのある街」(自由国民社)の時に、街の地図の画を何十枚も描かせて頂いてからの御縁である。

この色地図の仕事は、今でもとても気に入っている楽しい仕事だった。
原さんはずっとストリッパーを撮っておられる方だが、第17回準太陽賞を受賞、2000年代に入って「現の闇」(@ニコン)「幻の刻」(ギャラリー蒼穹舎)「常世の虫」(@サードディストリクトギャラリー)など、心象を投影したような展示が続き、2010年から「光あるうちに」というタイトルのもと、幾つかのギャラリーでの企画展示をなさった。都内で催された展示はだいたい伺って拝見していたが、今回の銀座ニコンサロンでの展示は、その集大成とも言えるようなものかと思う。

全70余点に及ぶ今回の展示の作品は、どれも声高なものではなくて、どちらか言えば地味ではあるけれど、どの作品にも「光りあるうちに(光の中を歩め)というフレーズが呪文のようにわが身をかすめていた」という言葉の通り、限りある生を意識しながらも、だからこその生の一瞬の輝きや翳りを掬い取っているようにも思われる。
原さんはとても優しい、情のふかい人で(と私には思われる)、いつも会えば微笑していて、私なんぞのことも励まして下さる。以前お住まいになっていたのが横浜の嘗てのわたしの実家にも近かった(偶然)こともあって、原さんの撮る横浜の写真は、私が喪ってしまった諸々を想起させる切なさもあるのだけれど、どの作品にもそれが今生の一枚となるかもしれない、そういう想いで一瞬にすべてを籠めてシャッターを切っている、そんな写真家の静かな覚悟が見え隠れする。
光あるうちに
原 芳市 写真展
銀座ニコンサロン
2012.2.15~2.28 10:30~18:30(最終日~15:00)
*「現の闇」「光あるうちに」写真集も
会場で販売しています。是非に。


ほんの少しずつ・・・ではあるが、根津の路地に当たる陽ざしが
明るみを帯びてくるようになった。そして夕暮れの時間が延びてくるように
感じられる。春はもう少し・・・もうちょっとだ。
寒過ぎる日が続いて渋っていた工場巡りも早く再開したいし
自分の周辺の事ごとも、あともう暫くで片付いて行きそうな気配ではある。
古本屋で見つけた小関智弘さんの町工場の技術の本を読んでいると、
本当に色々な意味で力づけられるのだが、この人の文章自体がとても好きだ。
淡々としているけれど、想いが行間に籠められている。
まさに内容も文章も燻し銀の味わい。
春は、鉄までもが匂うそうだ。
*****今月末くらいまで画はお休みして、
資料用に撮りためた写真を週1ペースでアップしています*****
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