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N的画譚

N町在住、陋巷の名も無き建築物を描くneonによる、日日の作画帖です。
しぐれの袋小路


橋本から京都市内に帰る途中の車窓からの景色に、いくつか忘れがたい断片があり、どうしても降りてみたくなった私は、翌日の午後にまたその景色を訪ねていった。電車は少し町並より高いところを走っていたので、目を引いたその甍屋根の並びがよく見えた。駅からその景色を追うように歩いたが、今度は地べたを這うような感じで、なかなか車窓のようには俯瞰することができない。しかし、細い路地を入っていけば、はっとするような場末の家並が目の前に薄暗く現れる。
折悪しく、かき曇ってきた空から、ぱらぱらとしぐれが降ってきた。春だというのにめっきり寒く、北風に変わってあたりが一段と暗くなる。
だがその暗さは、何だかなつかしいのだった。
旧街道沿いと思われるその一帯は、お世辞にも綺麗とは言えない、いわば陋巷である。そしてなぜか袋小路が多い。ごみごみと立て込んだ路地には、ほとんど通る人もないが、家の中にはたしかに気配があって、急にぽっと外灯がついたりする。しぐれをよけながら、しばらくその軒に身を休めた。
少し小やみになったところで、街道に出て、道に沿っている川むこうを眺めると、美しい十字をいただいた教会が見えた。かつて教会が建てられたところは、貧民街の中が多かったという話をふと思い出す。
ゆきずりの小さな一角ながら、私にとって忘れがたい町となった。
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いえいえ・・・
>Next-JISさん
コメントありがとうございます。文章について書いて頂いたのは初めてです。でも、私が主人公(語り手)じゃ、興ざめなさる方も多いと思いますよ~。。はは。。まあ、日頃書かないので、ブログって、文章の練習の場にはなりますけどね~。是非そのうち根津へ下りていらして下さいませ。
2006/04/05(水) 17:13:49 | URL | neon #Fos2lKYE[ 編集]
小説を読んでいるようです…。
こんにちは~!! neonさんの記事は、小説を読んでいるような感じを受けます。 neonさんが、どう考え、何に感動したのか、本当によく伝わってきます。 凄いですよね…。
私は、文を書いていると、支離滅裂になる方なので、本当に感心しますっ。

この目で、作品の数々を見る日を愉しみにしています!!
2006/04/05(水) 11:40:52 | URL | Next-JIS #-[ 編集]
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