N的画譚

N町在住、陋巷の名も無き建築物を描くneonによる、日日の作画帖です。
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感傷旅景 3













そこは廃れた小さな劇場で、夜になって灯りが点っても大したひと気もなく、けばけばした色のネオンも却って寂しさを掻き立てるようなところがあった。おそらく次回この町に来るときには、建物ごと無くなってしまっているだろう。建物が無くなると、人びとの記憶からも失われていくのは世の常だ。

そしてそういう町を訪ねそういう建物に出会い、自分の画のなかに再生させる。
しかし私の場合必ずしも事実通りの再生でもなく、勿論記録でもない。そして限りない哀惜の念はあるけれど、その建物の保存を声高に叫ぶものでもない。
私が惹かれるのは大体において、保存運動が起きるような建物ではなく、逆に町のなかでひっそりと隠れるように息づいていて、時には疎外されるような憂き目に遭っているものもある。無くなるときはあっけなく、更地ともなればもう誰も振り向いたり立ち止まったりすることもない。

だが、もう実際に見ることができなくなった建物を想うとき、何故だか私の中で初めて顕ちあがるものがある。実体を持たなくなったことで実景から解き放たれ、自分の中で再構築できる自由さのようなものが生まれるのだろうか。気恥ずかしい言葉を使えば、滅ぶことで永遠に回想できるのである。だからといって勿論滅びの美学などと言う気はない。滅び自体が美しいとは思わないから。ただ、自分の中の回想では、その建物は色々な意味に於いて魅力的で、それらを少しでも魅力的に描くためには、自分のちっぽけな残りの全人生を費やしても、何ら後悔することはないだろう。
Comment
≪この記事へのコメント≫
CAZ様
>おっしゃること、よくわかります。
賑わいのある町のほうが良いに決まっているけれど、それが失われてしまった町、静かに廃れようとしている町に惹かれてしまう自分の性というか業というか、そんなものも感じます。

実際に半死状態になった町を再生するのはなかなか難しい問題もありますね。おかしなレトロ感覚で、やっつけ仕事のように空しい安っぽい建物を造ってしまうのもよくありますし。そういう中途半端なものに対しては、私自身はとても拒否反応がありますね。。。
2009/08/09(日) 20:44:53 | URL | neon #Fos2lKYE[ 編集]
Hologon158様
>毎朝・・・ですか?
大変光栄恐縮です。。。
清々しい気持ち・・・、いや多分そんなに清々しくない画も多いかとも思うのですが、そんなふうに感じていただけるのは、ブログを細々とでもやっていて好かったと、ほんの少し思える瞬間です。ワタシの画は万人受けするものではないのですが、Hologonさんのような奇特な(笑)方が時々深く愛してくださり、その少ない数名の方々に支えられています。今後も、そういう方を大事に、裏切らない画を地道に描いていきたいと思っています。

実はこの画はもう10年ほど前に描いたもので、かなりフィクションも入っていますが、HPのほうにも画像を出したことがなかったのを思い出し、古い、下手な写真の画像ですが出してみたのです。12号くらいの大きさですが、何処へしまったか忘れてしまいました。。。

諦念。そうですねぇ。その言葉に補足するなら、そこには捨て鉢な感じはなく、黙って静かに最期を迎えようとする厳かな感じさえあります。それに打たれるのですね。ワタシは。
2009/08/09(日) 20:33:58 | URL | neon #Fos2lKYE[ 編集]
そう、壊されると、見慣れていたはずなのに、そこに何があったかも忘れてしまう人間の記憶。往時の賑わいも遠い記憶の中。neonさんの絵をジーっと見ていると、想像の世界で拡がり、人が一人二人と増え、往時の賑わいが、ざわめきとともに蘇ってくるのです。その絵の場所には行ったことはないのだけど。再生されて、そんな賑わいのある街づくりがいたるところで、できるといいのですが。
以前、とあるお城の近く、古る~い、喫茶店がありました。一度入ってみたいと思っていて、そのうちに・・と思っていたのですが、ある日その前を通り過ぎると、同じ敷地で同じような大きさで、新築の喫茶店に変身していました。レトロが良いということでもないのですが、建物の自己主張がだんだんなくなっていくような気がします。
2009/08/09(日) 11:52:10 | URL | CAZ #-[ 編集]
朝一番に、夜が来た!
毎朝、実は一番最初にneonさんのブログを訪問します。
清々しい気持ちになるため。
そして、今朝!
なんという夜!
浄化された空気があたりを満たしています。
おっしゃるとおり、明日来てみると、姿を消しているかも知れませんね。
でも、劇場も古い通りも、全盛時代をはるか彼方にして、
追憶と休息のときを過ごしながら、運命を待っている。
まったき諦念が、この場所をすでに伝説の場所にしてしまったかのようです。
お書きになっている言葉そのままの世界。
最後にお書きになっているとおり、
ぜひぜひ、このシンと澄みきった諦念の境地を描き続けてください。
この絵に出会って、すっかり心を満たされて、今日一日を過ごすことができます。
ありがとうございました。

2009/08/09(日) 09:55:13 | URL | Hologon158 #JalddpaA[ 編集]
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