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N的画譚

N町在住、陋巷の名も無き建築物を描くneonによる、日日の作画帖です。
ヤスリ工場













都内のO区まで行く時間があまりとれず、しかし少しなら・・・ということで、ここのところあまり遠くないA区に出かけている。最寄りの駅からそう遠くない所に小さな町工場が集まっている地域があるのだ。

ごみごみと立て込んだ住宅地のなかにちらほらと、らしきものが散見する。
トタンの屋根や壁は目印だ。
それで、ふと気付く。今迄随分歩いてきた町々の、魅力的なトタン物件というものは、住宅もあったが実は町工場であったものがかなりの数に上るのだ。・・・今になって合点がいく。

A区のとある地区には、そうした平屋トタンの工場が多い。そして、そう言うのは躊躇われるが、うらぶれた雰囲気である。このラフ画の一角もそうで、画的には魅力的だが、よく見ないと判らないような板きれに「××ヤスリ」とマジックで書いてあり、ああ工場なのだと思うと同時に、言い知れぬ哀しみと憤りのような感情さえ湧いて来る。こういう所でかくも地味に、埃まみれになって仕事している(いた)人々の暮らしとは、一体何であろうかと。

その一方で、先日はとても心温まる出会いなどもあったのだけれど、それはまたいずれ。


Comment
≪この記事へのコメント≫
Rambler5439様
>おいでになった場所は、まさに此処でした。やはりそういう想いをお持ちになられますよね。私もこの一角を目にした時、本当にその通りのことを感じました。後で写真をよく見たら、板ではなく電柱にそのまま屋号が書いてありました。

しかし、その屋号で検索してみると、「荒川区のマイスター」というのに此処の職人さんが認定されていました。たまには行政も少しは好いはからいをしたなと思いましたが、いやそれは当然のことだと思い直しました。こういう方にこそ、敬意と評価を惜しみなく捧げてほしいものです。そしてもっともっとそういういぶし銀のような人達を大事にしてその技術を伝えていってほしいものです。

職人さんたちは、工場の構えや住まいの粗末さもものともしないような、仕事に対する誇りをお持ちなのでしょうけれど、やはり立ち行かなくなっていく工場も多いですから、積極的な支援策などが施されるべきだという想いを強くしますね。
2011/12/20(火) 17:02:45 | URL | neon #Fos2lKYE[ 編集]
5年ほど前、荒川4丁目の小径でヤスリという看板を見かけ、木造の建物にはさまれた通路とも小庭ともつかない一隅に目をやると、職人らしい風貌の老人が行水をしていました。おそらくかつての下町では、そういった光景は珍しくなかったのでしょう。安い手間賃の下請け仕事であるにもかかわらず懸命に働いていた人々。そういう人たちこそが奇跡とも形容された高度成長の原動力だったにもかかわらず、われわれの社会は相応の報酬を支払ってこなかったのではないか。姿を消した町工場の跡地を眺めるたびに、そんなことを考えます。
2011/12/20(火) 12:08:40 | URL | Rambler5439 #0ecWsDRU[ 編集]
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