N的画譚

N町在住、陋巷の名も無き建築物を描くneonによる、日日の作画帖です。
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一銭五厘たちの横丁-その2 *I理髪店


前述の「一銭五厘たちの横丁」で探しあたった家族のひとつが、なんと我がマンションの隣のI理髪店の一家であった。

桑原甲子雄撮影の二枚の写真に写っているのは、当時のご主人と娘さん。出征中の二人の息子に送られたらしい。幸い二人の息子は帰還し、弟のほうが理髪店を継いだ。現在はその弟さんも既に亡いが、奥さんが元気に床屋業を営んでいる。
写真を30年ぶりに見たときの、弟さんの浮き立つ様子は、この本の中でも微笑ましくいかにも下町らしさが横溢して楽しい。明暗併せ持つ戦中戦後譚は、勿論この家族にもあるのだけれど。
根津に越してきてじき、私はこの床屋に子供を連れていった。
新しいマンションの住人に、必ずしも最初は打ち解けてはいなかったけれど、回数を重ねるうちに、おばちゃん(奥さん)も愛想の良い笑顔になり、権現様に夜店が出ているからいっといでとか、亀戸天神の藤が見頃でそれは綺麗だとか、色々な立ち話もするようになった。そして「ここは好い町だよ、ここに住むと他には住めないよ」と結ぶ。

おばちゃんにこの本のことを話してみたことがある。一瞬懐かしそうな色が顔に浮かぶ。「旦那のお父さんと娘だよ」「防空壕代わりに、家の中に穴掘ったらしいよ」でも意外にもあまり多くを語らなかった。「みんな死んじゃってねえ」。。。

たった一銭五厘の薄っぺらな葉書一枚で、こうした下町からも漏れることなく主や息子が消えていき、家族の運命が変わっていく。家族が揃い、平凡な日常があること、そのかけがえのなさ。そんなことを深く思う。そして身近なところにも、長い暦を経てきた人びとの年月があるのだ。

そう思いながら、本当に今自分の身近にある建物を描きたい、という気持も改めて湧いてくる。余りに近くなってしまうと、関心が逸れてしまいがちだが、もう一度すぐそばのものたちを見直してみよう。

で、今日の画像は、おばちゃんが今ひとりで切り盛りしている、現在のI理髪店である。
Comment
≪この記事へのコメント≫
ほお~
>わきたさん
ほおほお、そういったものですか。これは私には体験できない感覚ですね~。ヒリヒリですか。う~ん、おばちゃんはやってくれそうな気がしますが。。。お髭のないわきたさんも一度拝謁してみたいですね~。
2006/09/07(木) 20:30:08 | URL | neon #Fos2lKYE[ 編集]
髭剃り
今はあご鬚、口髭をはやしているのでできないのですが、散髪するときは、熱~いタオルで顔を蒸してもらって、よく切れる剃刀で、髭を深剃りしてもらうのが好きなのですよ、私は(^0^)。皮膚を引っ張って髭の根元から剃ってもらうのです。アフターシェープローションで、ちょっとヒリヒリするぐらいが好きです(といっても、わかりませんよね(^^;))。ですので、ここしばらくは、その“快感”を味わっていません。
2006/09/07(木) 17:17:46 | URL | わきた・けんいち #YDwNo08I[ 編集]
是非どうぞ
>GG-1さん
おいでいただきありがとうございます。
鉛筆+色鉛筆でクロッキー帳に描いたので、ちょっといつもと違うかな。電柱はほんとはコンクリですし、斜めっていませんが、馬鹿力で曲げました。
GG-1さんのバアイ、おばちゃんには「あらアンタ、無精髭は剃った方が男前だよ」って言われそうかな~。(あ、ほんとはコダワリのお髭なんでしたね、失礼失礼)
2006/09/06(水) 12:51:00 | URL | neon #Fos2lKYE[ 編集]
いえいえ。。。
>tittiさん
いつもありがとうございます。いえいえ、懐に溜めすぎて形にならないことも。。。というか単にノロいだけだったりして。
2006/09/06(水) 12:42:40 | URL | neon #Fos2lKYE[ 編集]
そんな話を聞くと私も此処で散髪したくなりますねえ

何時もとなんだか違うなと思ったら
鉛筆画の所為かな
でもお約束の電柱とアンテナは確り立ってますね
木製電柱かな
斜め具合が宜しいですな~
2006/09/06(水) 12:01:20 | URL | GG-1 #-[ 編集]
こんにちは。
neonさんは、一度懐にじっくり落としてから描き始めるのですね。
ん~深いなぁ。
2006/09/06(水) 11:21:33 | URL | titti #wK3Ft9Ds[ 編集]
先約にはかないませんが
>わきたさん、いつも忘れずおいでくださりありがとうございます。
足立のあの先約床屋さんにはかないませんが、このウチの隣の床屋さんでも、是非一度散髪なさって下さい~。色々なものがごちゃごちゃっとしている、楽しい床屋さんです。おばちゃんの腕も確かです。で、きっと「あらアンタお髭が似合うねえ。で、剃らなくていいの?」っておばちゃんが言っているのが目に浮かびます。。。
2006/09/06(水) 10:58:50 | URL | neon #Fos2lKYE[ 編集]
いや~
いや~、グッとくるお話しですね~。密かに感動してます。「おばちゃんにこの本のことを話してみたことがある。~長い暦を経てきた人びとの年月があるのだ。」の部分、特に、心にジ~ンと浸透してきます。こちらの理髪店“でも”散髪したくなりました~(masaさんと足立区の先約があるまのですから…(^^);;)。
2006/09/05(火) 22:56:22 | URL | わきた・けんいち #YDwNo08I[ 編集]
tomoさん
>どうも先ほどはありがとう~。webデザイン頑張ってみます。。。
そーですねー、tomoさんは御住人でした~。ご近所のミカワヤさんの在りし日の姿、ご家族や近所のかたの写真もあるんですよ。是非見て下さい(って、今度貸しますよ~)。当時の風俗などもよくわかって興味深いです。
2006/09/05(火) 16:41:23 | URL | neon #Fos2lKYE[ 編集]
谷中清水町より
neonさん、こんばんは。谷中清水町よりtomoです。先日はありがとうございました~。
桑原甲子雄は私にとっても敬愛する写真家のひとりです。この文庫本のことは知りませんでしたが、neonさんの文章を読んで私も非常に興味を持ちました。いつも何気なしに通っているところでも、知るにつけ愛着が増しますよね。今度、本を探してみようと思います。
2006/09/05(火) 01:15:51 | URL | tomo #-[ 編集]
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