
陋巷のすがれた町を歩いていると、時々現れるのが
こうしたモルタルのピンク色の外壁だ。
この色がとても好きである。
こういった町の建物を描く時には、私は
形状はかなりデフォルメしたとしても、色にはそれなりに
気を配る。やはり、巷にはよくある色とそうでない色とがある。
形をそのままに描かなくても、色の組み合わせで
何となく場末の色感というのは出せるのではないかと思ったりする。
その中で、このピンク色を自分の中でだけ<灰ピンク>と
呼んでいる。私の気に入っているアクリル絵の具のとあるピンクに
グレーを足すと、ちょうどこんな色になるのである。
やはり、私の好きな町は根底にグレーなものを抱えているのだろうか。
モルタルの質感は、色彩を粗く曖昧な雰囲気にするし、そこに
経年の染みや汚れが塗されると、もっと複雑で深みや翳りを纏ったものになる。
そしてこの<灰ピンク>は、それでもどこかに微かな色気と
ささやかな華を匂わせているのが惹かれる理由だろうかとも思う。
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